しかし、米国に次ぐ規模の香港と中国での大型IPO案件も見逃せない。2017年に期待される3大案件を下記に紹介する。
企業価値6兆円突破の「アント・フィナンシャル」
中国アリババ傘下のアント・フィナンシャルは中国最大の決済サービスの一つであるアリペイを運営する。アクティブユーザー数は約4億5,000万人、1日の取引回数は1億7,000万回に達する。同社の企業価値は昨年4月時点で600億ドル(約6兆7,000億円)だった。
ブルームバーグによるとアント・フィナンシャルは今年前半に香港でのIPOを計画中という。同社の上場は2010年に221億ドル(約2兆5,000億円)を調達した中国農業銀行のIPOを超える規模になると期待されている。
取引額54兆円のフィンテック企業「Lufax」
中国最大のソーシャルレンディング及び健康管理サイトLufaxは、中国最大の保険会社「中国平安保険」によって設立された。Lufaxのユーザー数は昨年2,300万人を突破。取引額は4,800億ドル(約54兆円)を超えた。
昨年1月の調達ラウンドで企業価値190億ドル(約2兆1,000億円)と評価された同社は、ロイターによると、香港での上場を計画。調達額は50億ドル(約5,600億円)と見込まれている。
中国初のネット保険会社「衆安保険」
ジョンアン(衆安保険)は中国平安保険、アリババ、テンセントが出資する中国初のネット専門保険会社だ。昨年5月の資金調達時の企業価値は約80億ドル(約9,000億円)だった。
ブルームバーグの報道によると、同社は当初、香港か米国でのIPOを考えていたが、その計画を撤回し、中国本土での上場に切り替えた。海外勢の関心の低さと、大株主で同じく上場計画があるアント・フィナンシャルとの利害対立を避けるために方針を変更したと報道されている。
中国企業が「香港での上場」を目指す理由
CMBインターナショナル・セキュリティーズのダニエル・ソーは「アント・フィナンシャルとLufaxが香港でのIPOを希望するのは、2社はテック企業の色彩が強く、香港市場のほうがより高い価格がつく可能性が高いと考えるからだ」と説明する。
また、中国企業は政府の厳しい資本支配と、700社以上が上場手続きを待っている混雑を避けるため、中国本土でなく香港での上場を望む面もある。
ソーは「アント・フィナンシャルとLufaxが上場すれば、株価は公募価格より約20%高くなる」と予測する。また彼は「ジョンアンが想定通り中国本土で上場したら、値幅制限いっぱいの44%の上昇になるかもしれない」と述べている。