アマゾンは様々なエリアでライバルのネットフリックスの後塵を拝してきたが、アカデミー賞作品賞ノミネートに関してはネットフリックスよりも早く達成した形だ。
アマゾンは「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の配給権を2016年のサンダンス映画祭で1,000万ドル(約11億円)で獲得した。アマゾンはこの時「トッド・ソロンズの子犬物語」や「Love & Friendship」などの配給権も購入し、映画への参入が本気であることを示していた。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は米国の映画館で2016年11月に公開され、国内での興行収入がおよそ3,900万ドル(約44億円)に上った。この作品からはケイシー・アフレックが主演男優賞、ミシェル・ウィリアムズが助演女優賞、ルーカス・ヘッジズが助演男優賞、そしてケネス・ロナーガンが監督賞と脚本賞にノミネートされている。
ネットフリックスも2015年のトロント国際映画祭で戦争映画「ビースト・オブ・ノー・ネーション」を1,200万ドル(約14億円)で購入した。賞にノミネートされるように2週間だけ劇場公開を行ったが、興行収入は9万1,000ドル(約1,000万円)と振るわず、アカデミー賞にもノミネートされなかった。ネットフリックスはこれまで5回アカデミー賞でノミネートされているが、すべてが長編ドキュメンタリーでのノミネートだ(今年は「13th -憲法修正第13条」がノミネートされている)。
アマゾンの快挙はネットフリックスのやる気に火をつけたかもしれない。同社のコンテンツの予算は60億ドルと巨額だ。ネットフリックスは2017年のサンダンス映画祭でコメディー映画「The Incredible Jessica James」を300万ドル(約3億4,000万円)で購入し、劇場公開する予定だ。
ネトフリも映画を次々と「大人買い」
例え映画館でヒットしなくても、ネットフリックスは評論家から質の高さを評価される作品を多く入手している。2017年のゴールデングローブ賞では、ストリーミングサービスとしては史上初となるドラマ部門作品賞を「ザ・クラウン」で受賞した。直近の4四半期の売上高は予想を上回り、新規加入者は史上最多となった。ネットフリックスはこれをオリジナル作品が成功したことによるものだとしている。調査会社eMarketerによると、ネットフリックスのユーザー数は1億2,800万人であるのに対し、アマゾンはわずか8,530万人だ。
アマゾンは映画の購入に多額の資金を投じており、アカデミー賞へのノミネートは同社の悲願の達成と言える。今年のサンダンス映画祭ではすでに「The Big Sick」を1,200万ドルで購入しており、ほかの作品も購入しそうな勢いだ。さらにオリジナル作品にも力を入れており、リチャード・リンクレイター監督による「Last Flying Flag」に加え、ケイト・ウィンスレットとジャスティン・ティンバーレイクが出演するウディ・アレンの映画もプロデュースする。
うまくいけばアマゾンはストリーミングサービスとして初めてアカデミー賞を受賞するかもしれない。既存の映画配給会社たちにも大きな脅威となるだろう。