この小さな集合体からネットエイジが生まれ、仮屋薗も社外取締役として参画。その発展形として渋谷ビットバレーが起こり、NILS(日本最大規模のスタートアップカンファレンスIVSの前身)へとつながっていく。仮屋薗が構想した、経営者同士が議論できるプラットフォームNILSの成功は、今では数ある同カンファレンスの原型とも呼べる。
「ネットワークを広げ巻き込むエコシステム志向は、グロービスのDNAそのもの」
グロービスの立ち上げた「G1」は、日本版ダボス会議と呼ばれ、政治経済文化の垣根を超えて日本のリーダーがつながるプラットフォームとして機能している。
「入り口は赤浦さん、出口は小澤さん。強い“信頼関係”がもたらした成果でした」
仮屋薗が感慨深げに語るのが、ヤフーが今年7月に買収したECサイト構築のコマースニジュウイチである。同社と仮屋薗の縁をつないだのが、インキュベイトファンド・代表パートナーの赤浦徹だ。両者は同数株式比率のイコールパートナーとして9年間、まさに二人三脚で同社の成長を支えた。
そんな中、買収の声がけをしたのが、現在ヤフーのショッピング事業を統括する小澤隆生である。仮屋薗にとって、小澤はVC初期の投資先の創業者。ネットエイジでの創業支援からグロービスとしての投資、楽天への売却までをサポート、紆余曲折を共にした仲である。約15年の時を経て、今度は反対の“託す側”に回った形だ。
20年以上、日本版エコシステムの構築に尽力してきた仮屋薗は、15年に日本ベンチャーキャピタル協会会長へ就任。現在の目標は、「エコシステムのさらなる拡大」だ。そして、「スタートアップへの投資額及びイグジットの規模感の拡大」。ランキング1位である仮屋薗のキャピタルゲインは約23億円(編集部推計)、一方の米国は200億〜300億円規模も少なくない。自分の結果をみて改めて痛感したというが、仮屋薗の表情は明るい。
「価値創造のサイズを10倍に増やさなければいけないとは感じています。そのためには、偶発的ではなく、継続的に成功を生み出すエコシステムを充実させる必要がある。一足飛びにはできないので、これまで通り、ひとつひとつ積み上げていきたいと思いますね」