こんな数字をみたら誰だって電動ドリルを買うのを思いとどまるはずだ。実際、この数字はエアビーアンドビーのブライアン・チェスキーCEOがかつてニューヨーク・タイムズ紙上で挙げたもので、その際、氏は読者にこう問いかけた。
「本当にみんな自分のドリルを持つ必要があるのでしょうか?」
電動ドリルをちょっと使いたいときに、わざわざ貸してくれる相手を探すのは大変だ。だからほとんどの人は「もしもの時のために購入しておこう」と考える。その結果、滅多に使わない工具やキッチンツールが家中に溜まっていくというわけだ。
いま使わないものを、別の誰かが必要としているかもしれない。だったらその人に使ってもらおう――。シェアリング・エコノミーはそんな考えがベースになっている。
きわめて説得力のある話だ。だからこそこのビジネスモデルは受けた。2008年に産声を上げたエアビーアンドビーは、空き部屋と旅行者をマッチングするサービスが支持され、瞬く間に250億ドル規模のプラットフォームへと成長した。ドライバーと利用客をマッチングするサービスのウーバーとともに、いまやシェアリング・エコノミーの旗手と言われている。
だが、このいまをときめくエアビーアンドビーやウーバーが近い将来、時代遅れの企業になるとしたら?こんなことを言うと、私の頭を疑う人も出てくるかもしれないが、無理もない。エアビーアンドビーもウーバーも時代の最先端を行く企業だからだ。
だが残念ながら真のシェアリング・エコノミー社会はまだ到来していない。しかも実現した暁には、エアビーアンドビーやウーバーは先端企業ではいられなくなる可能性があるのだ。
そんな驚くべき近未来を教えてくれるのが、『ブロックチェーン・レボリューション』ドン・タプスコット アレックス・タプスコット著 高橋璃子訳(ダイヤモンド社)である。本書はこれから世界にどんな巨大な変化が起きるかを知りたい人には必読のテキストだ。
インターネットの登場は人類に情報革命を起こしたが、ブロックチェーンはそれに匹敵するインパクトを社会に与えると言われている。インターネットがこれだけ普及してもいまだに解決できなかった問題を、ブロックチェーンが解決できることがわかったからだ。
インターネットが解決できなかった問題とは何か。それは「信頼性をいかに担保するか」という問題だ。
オンライン上でつながった相手が本当は誰か。これまではそれを確かめる術がなかった。40代の男性と言っているが本当か。犯罪歴はないと言っているが信用しても問題はないか。取引をしてもちゃんと代金を支払ってくれるだろうか……。