ドナルド・トランプは11月21日、ネットの中立性に反対の立場をとることで知られる2名の人物を連邦通信委員会(FCC)の移行チームメンバーに指名した。通信大手ベライゾンの相談役を務め、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の保守系研究者として知られるジェフリー・アイセナッチと、スプリントの元ロビイストとして知られるマーク・ジャミソンだ。
米国大統領が持つ強力な権限の一つに挙げられるのが、通信関連企業に多大な影響を与えるFCCのリーダーを任命する権利だ。オバマ政権下でFCCはネットの中立性をより強固にする立場をとっており、2015年の「オープンインターネットオーダー」ではネット接続事業者がどのようなコンテンツであろうと平等なスタンスをとることを求めた。
具体的には、例えば利用者がネットフリックスを視聴する際にプロバイダー(ISP)が高速回線を設け、別料金を徴収するような行ないを禁じている。
ISPは長年、ネットの中立性に反対の立場をとってきた。これに対してストリーミング事業者やテック企業らの多くは中立性を支持してきた。2014年にはグーグルやツイッター、フェイスブックら100以上の企業がFCCに書簡を送り、「ネットの中立性に制限を加えることは、インターネットに重大な驚異をもたらす」と主張していた。
グーグルは現在もネットの中立性推進の宣言をサイト上に掲載している。そこには「ISPが特定のサービスやコンテンツをブロックしたりすれば、ネット上のイノベーションが阻害される」と記載されている。
これに対し、アイセナッチとジャミソンらの主張は真っ向から対立する。2014年にアイセナッチは「ネットの中立性は縁故資本主義だ」と発言した。また、2016年にジャミソンは「ネットの中立性こそがイノベーションの阻害になり、消費者に不利益をもたらす」との論文を執筆している。
オバマ政権下のFCC委員長、トム・ウィーラーはスプリントとTモバイルの合併に関し強硬に反対の立場をとったが、アイセナッチは規制緩和派の急先鋒として合併推進の立場をとっている。また、ジェイミソンも元スプリントのロビイストとして合併に賛成している。
フォーブスはFCCとトランプのメディアチームの双方にコメントを求めたが、現在のところ回答は得られていない。