アリババが600億円注ぐ中国スマホメーカー「魅族」の異色の経歴

m2 note (Credit: Meizu)

中国南部に位置する珠海市の九州港からMeizu(魅族科技)の本社までの道は、驚くほど美しかった。たくさんの木、趣のある通り、そして右手には海が広がり、ロサンゼルスからサンタバーバラへの海岸沿いへドライブをしているような感覚だった。同業者の多くが、ハイテク産業が集積する深センか製造業のハブである東莞に拠点を置く中で、海辺の都市、珠海を選んだMeizuは異彩を放っている。

Meizuはジャック・ウォン(黄章)が高校を中退し、電子製造業の工場で数年働いた後に、ポータブル音楽プレイヤーのメーカーとして2003年に創業した。発売したMP3とMP4のプレイヤーはすぐにヒットし、外部からの出資を受けなくとも健全に成長するだけの原資を蓄えた。そして2008年、Meizuはスマホ製造に参入した。

調査会社のIC Insightsによると、メイズは2015年にスマホを2,000万台以上販売し、販売台数でソニーとマイクロソフトを上回る世界11位のスマホメーカーになった。今年は2,500万台が視野に入っている。

売上は前年比350%の急成長

アップルやサムスン、ファーウェイ(華為)に比べると少なく感じるが、Meizuは最近まで独自資金で運営されており、昨年アリババから5億9,000万ドル(約617億円)の出資を受けたばかりだ。2015年の同社のスマホの売上は前年比で350%拡大した。

Meizuの幹部たちは、スマホ市場が世界の主要マーケットの多くで飽和点に達したと認識しており、3ケタ成長が今後も続くとは思っていない。

副総裁のリー・ナン(李楠)は次のように述べる。「これから2年間、スマホマーケットはおそらく縮小するだろう。Meizuはハードウェア企業からモバイルインターネットカンパニーに移行しなければならない」

その一環として、Meizuは独自OSのFlymeを開発した。アンドロイドをベースとしているものの、他社との差別化につながっている。2014年に入社したグローバルブランディングマネジャーのアード・ボーデリングは、例としてスマホから“戻る”ボタンをなくした取り組みを挙げた。

Meizuのスタッフたちは「消費者のフィードバックを大事にしている」と口をそろえる。もう一人のグローバルブランディングマネジャー、ロビン・イックマンズは「我々はオンラインコミュニティで常にファンと交流し、彼らの提案に耳を傾けている」と強調した。

創業者のウォンは隠遁者のようなイメージを持たれているが、孤高のトップというわけではない。ウォンは製品デザインに多くのアドバイスをしており、2015年に5.7インチだったフラッグシップラインのディスプレイを今年5.2インチに小型化したのも、彼の指示だった。

ボーデリングは「ハイエンドマーケットで大画面端末の競争は激しいが、小さなディスプレイの需要は見逃されがちだ。ウォンはそのギャップを見抜いた」と語る。

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編集=上田裕資

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