投資銀行ゴールドマン・サックスの創業者の一人、マーカス・ゴールドマンからその名を得た新事業は、信用格付けが高いプライム層をターゲットに、最大3万ドル(約311万円)までを無担保で融資する。特に、クレジットカード・ローンの借り換えを検討している人たち、その他の金融機関が融資の際に求める手数料などや複雑な仕組みを嫌う人たち取り込みを狙う。
「マーカス」を通じた融資は返済期間を2~6年、金利を5.99~22.99%の固定型とする。ローン取組手数料を徴収せず、返済日を柔軟に決定できるほか、全体として簡素化されたシステムであることから、借り入れ方法の「消費者にやさしい」新たな選択肢になるという。
同事業を率いるハリット・タルウォーは発表文で、「マーカスは、クレジットカード・ローンに代わるシンプルな借り入れ方法を求めている消費者に、選択肢を提供するものだ。クレジットカード・ローンのように金利が変動したり、何種類もの手数料を取ったりすることもない」と説明している。
消費者金融はゴールドマン・サックスにとって、新たな領域だ。だが、投資銀行である同社は、リスク管理とテクノロジーに強みがあり、それらは消費者金融向けの業務にも適用可能だと考えている。デジタル・プラットフォームでの借り入れやマーケットプレイス貸出など、新たな融資モデルの利用が増えていることから、特にこうした強みを生かせるとの見方だ。
レンディングクラブなどのフィンテック各社が運営に問題を抱え、大手銀行が支店の店舗ネットワークの合理化に力を入れる中、同社はこの新サービスの開始を、個人向け融資事業への進出の機会だと見込んでいる。
フィンテック企業に勝てる
ゴールドマンは、フィンテックによって引き起こされた改革においても、最先端に位置づけてきた。ケンショー(Kensho)やシンフォニー(Symphony)といったプラットフォームに出資。量的分析に基づく投資判断を行い、ウォール街で大きな成功を収めている多くのトレーダーたちを対象とした研修なども行ってきた。
タルウォーは先ごろポッドキャストで公開したインタビューの中で、「デジタル・テクノロジーによって大規模な支店ネットワークには疑問が持たれるようになっている…資金の流通において、一部の大手銀行が持っていた従来の強みはすでに、レガシーコストになっている」との考えを示している。
フィンテックの分野における新たな動きは貸し手側に対し、定性要因ではなく定量要因に基づいた分析によって融資を行う力を与え、それがゴールドマンに有利に働いているという。
資産およそ9,000億ドルを持つ同社には、個別のプラットフォームへの出資ではなく、貸出業務を強化できるだけの資金がある。マーカスは当初、融資を希望すると見込まれる数百万人に電子メールを送り、その人たちからの申し込みを受け付ける。その後は段階的に、業務の規模を拡大していく方針だ。