携帯電話の製造・販売から利益のおよそ半分を得ているサムスン電子の企業構造の簡素化と、株主への配当金の増額、米ナスダック市場への上場などを求めている。
韓国をはじめアジア各国の市場では、物言う株主が目立った活動をすることは非常にまれだ。エリオットの今回の申し出は、アジアの大企業には珍しくない複雑な企業構造に対し、株主らの不満が高まっていることの表れといえるだろう。ただし、エリオットは「史上最大規模の企業改革の一つ」について、建設的な語調で実現を呼び掛けている。
エリオットは10月5日、サムスン電子の取締役会に宛てて送った書簡を公開した。
その中でエリオットは、「われわれはこの提案を、新たな経営陣を迎えるサムスン電子が今後さらに前進し、素晴らしい遺産を築くための決定的な瞬間を生むものであり、多大な機会をもたらすものだと考えている。今こそ、本当の株主価値、企業統治、透明性の向上を実現すべきときだ。これらの実現は、サムスン電子の株式市場での適正な評価、ポートフォリオの中でもトップクラスの企業であることを反映した評価の実現につながるだろう。われわれは心から、サムスン電子がこの機会を捉えてくれることを願っている」と述べている。
分社化と上場を提案
エリオットは、サムスン電子の株価は同社が抱える企業統治の問題と複雑すぎるコングロマリット構造によって、市場に正当に評価されていないと指摘する。
提案は、李一族による同族経営のサムスンに対する野心的ともいえる内容だ。サムスン電子を持ち株会社と事業会社に分割することに加え、それぞれの市場への上場、新たな持ち株会社が事業会社の株式公開買い付けを行うことなどを求めている。
分社化に関連しては、グループ内のサムスン物産(Samsung C&T)と持ち株会社が合併すれば、サムスン電子(李一族)は事業会社への支配を強める一方で、税制上も有利な措置を受けられる可能性があるなどとも主張している。
エリオットはさらに、株主に対する270億ドル(約2兆7,920億円)の特別配当の支払いを求めたほか、フリーキャッシュフローの75%を株主に還元することも要求した。
新たに誕生する事業会社がナスダック市場に上場すれば、2014年の中国の電子商取引最大手アリババ以来、アジア企業による最大規模の上場になる見通しだ。エリオットは、米国での上場はサムスン電子を投資家に対してより開かれた企業に変え、現時点では同業他社より低く見積もられている同社株価の正当な評価につながるとの見解を示している。