民主党の米大統領候補者ヒラリー・クリントンが、学生ローンなしで大学に行けるようにすることを主要公約にするほど、この問題は深刻だ。学生ローンの借り換えを事業とするスタートアップは引きも切らない。
中国には学生ローンはほとんど存在しない。学生ローンマネジメントサービスのTuition.ioによると、中国の年間の学費は平均2,200ドル(約23万円)で、米公立大学の8,240ドル(約85万円)、米私立大学の2万8,500ドル(約295万円)に比べて格段に低く、収入が少なくてもローンの必要はない。
中国の学費が低いのは、政府の手厚い支援によるものだ。人的資本への投資は年間2,500億ドル(約26兆円)と試算される。
中国で学生ローンが存在しないもう一つの理由は、清華大学、北京大学、復旦大学といったトップ校のほとんどが国立だということだ。ハーバード、イェール、スタンフォード大学のような私立大学のバカ高い学費を、支払う価値があると受け入れている米国とは対照的だ。米国では名門公立校のカリフォルニア大学でさえ、地元在住の学生の必要経費は年間3万ドル(約310万円)を超える。
しかし、大金を払って米国で学位取得を目指す中国人学生も増えている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると昨年、米国の大学に進学した中国人は2006年の3倍以上に増えた。
経済成長で中国人の所得水準は上がっている。アリババのIPOだけでも何千人もの億万長者を生んだ。中国のスタートアップ企業の多くが、高所得、高学歴向けの金融投資商品をビジネスにしているが、米国のように学生ローンをマネジメントするスタートアップは成り立たないのだ。