政府は経済成長を支えるため、個人や小企業により多くの資金を貸し出す方針だが、与信のベースとなる信用データがないため、多くのスタートアップがオンラインの買い物記録等のデータを利用し、新たな仕組みを構築している。
スタートアップ企業はソーシャルメディアの投稿やレストランの支払履歴、通勤データなどから個人の行動パターンを把握し、返済能力を読み取ろうともしている。グーによると、オンラインで子供の洋服を定期的に買う人は、収入が安定しており、家族との結びつきが強い可能性が高く、債務不履行の心配が少ない。一方、深夜までチャットをする習慣がある人は、返済能力が疑われるという。
「これらすべてのデータを合わせて分析モデルを構築すると、かなり正確なクレジットスコアを得られるはずだ」とグーは述べる。
しかし、これらのデータも融資金額が大きくなると不十分だという。同社はユーザーが10万元(約157万円)以上を借り入れようとする場合、対面インタビューを実施する。ワンは「デジタルポートレートは人の財力をかなりの部分まで把握出来るが、完全ではない」と認める。
投資家たちの期待は大きい。グーの会社は昨年、プライベートエクイティから3,500万ドル(約37億円)の出資を受けた。
お粗末なコンプライアンス
しかし、ローン会社が急成長する中国では、プライバシーを守る法は整備されていない。北京大学光華管理学院のワン・ジーチョン(王志誠)教授によると、中国にはデータの収集や使用を規制する仕組みが存在しない。
中国ではユーザーの同意を得ないデータの売買は珍しくない。データ企業はグレーゾーンの情報まで収集しており、出生地や民族、宗教、性別なども信用力を測る材料にされるという。
さらには、貸し手側のコンプライアンスもお粗末だ。今年6月、オンラインファイナンスの借貸宝がローンの担保としてヌード写真を要求していることが、中国メディアの中国青年報の報道で明らかになった。同サイトはヌード写真を提供した女性により多くのお金を貸すことを保証していたという。
China Rapid Financeのワンは言う。「プライバシー保護に関する法的枠組みは、中国ではまだ形成途上だし、問題が表面化しないと法律は対応しない」