乳がん発見を助ける人工知能 人間の30倍の速度でデータを解析 

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乳がんの発見に有効なマンモグラフィで問題が発見された場合、一般的には乳房生検が行われる。しかし、この生検は往々にして不必要であり、コンピューターの力を借りれば劇的に減らせるかもしれないとAI(人工知能)の研究グループは主張する。

ヒューストン・メソジスト病院は8月29日、マンモグラフィの結果を人間の30倍も速く99%の正確さで解釈できるAIソフトウェアを開発したと医療ジャーナル「Cancer」で発表した。このソフトウェアは患者のカルテを医師が検討するための診断情報に瞬時に置き換え、がんのリスクやさらなる検査の必要性を判断するのに必要な、信頼性の高いサポートを短時間で提供できる。

研究チームは、このソフトウェアが乳がんのリスクをどれだけ評価できるか判断するために、乳がん患者500人分のマンモグラフィの結果と病理報告書、乳がんのサブタイプに関する診断情報や相関性のあるマンモグラフィの結果をAIに提供した。その結果、臨床医2人は50人分を検討するのに50~70時間かかったのに対し、AIはわずか数時間で全員分のがんリスクを評価できたという。つまり医師の時間を大幅に節約できる可能性があるのだ。

乳がんのリスクを素早く判断するためには技術の力が必要だ。その例として研究者グループが挙げたのが米疾病対策センター(CDC)と米国がん協会が最近発表した統計だ。それによるとアメリカで行われている年間1,210万件のマンモグラフィの最大で半分が誤検出だという。

マンモグラフィの結果乳がんのリスクが3~95%とされた患者には高い頻度で生検が行われる。その数は年間160万件以上だが、20%は誤検出の結果行われた不必要な生検だという。

誤検出を減らし医療コストを削減

開発されたソフトウェアは上昇する医療コストの抑制にも有効だ。米国立がん研究所はそのコストが2020年までに年間1,580億ドル(約16兆円)を超えると試算している。調査会社Grand View Researchによると、検査デバイスの市場規模は2024年までに9億1,120万ドル(約938億円)に達する見込みだ。

一方でジョンズ・ホプキンズ大学の研究者も、最も一般的な非浸潤性の乳がんである非浸潤性乳管がんと診断された患者に対する不必要な乳房生検により、年間3,500万ドル(約36億円)が無駄になっている可能性があると指摘する。

今回開発されたソフトウェアによって医師が乳がんのリスクを診断する方法や生検を推奨する手順が改善され、不必要な生検が減ることを研究チームは願っている。ヒューストン・メソジスト・リサーチ・インスティチュートのシステム医療学部の部長であり報告書の共同リーダーを務めたステファン・T・ウォン(Stephen T. Wong)は以下のようにプレスリリースでつづっている。

「このソフトウェアはわずかな時間で数百万件の記録を評価する。それにより、我々がマンモグラフィを使って乳がんリスクをより効果的に評価することを実現します。さらに不必要な生検を減らす可能性も秘めています。これだけ多くのカルテを正確に評価することは、AIなしでは事実上不可能と言えます」

編集=上田裕資

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