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2016.08.23

米ファイザーの巨額買収、高すぎるがん治療薬への影響は?

Photo by Spencer Platt/Getty Images

米製薬大手ファイザーは8月22日、同国バイオ医薬品のメディベーション(Medivation)をおよそ140億ドル(約1兆4,000億円)で買収することを明らかにした。

メディベーションが手掛ける前立腺がん治療薬「イクスタンジ(Xtandi、一般名エンザルタミド)」の販売権取得が主な目的だ。

製薬業界ではがん治療薬の開発・販売権をめぐり、巨額を投じての買収劇が続いている。だが、これらは各社が今後の薬価の値上がりを見込んでいることを前提にしなければ、つじつまが合うものではない。がん治療薬は、最近では患者一人当たり、年間約10万ドル(約1,000万円)以上も当然のようになってきている。

患者の中には、複数の治療薬を必要とする人もいる。それでも各社は、高い薬価を請求し続けることは可能だと考えているかのようだ。買収価額を引き上げながら、取得合戦を続けている。がん治療薬を手掛けるバイオテクノロジー企業の買収価額が今後、下がることはないだろう。

製薬業界に関する情報分析を行うデータモニターのアナリスト、アマンダ・ミクラスによれば、今回の買収価額は、最近合意に達したその他の買収契約とそれほど大きくは変わらない規模だ。米バイオ医薬品会社アッヴィ(AbbVie)は、血液がん治療薬「インブルビカ(Imbruvica)」を開発した米ファーマサイクリックス(Pharmacyclics)を約210億ドルで買収している。

メディベーションは当初、仏医薬大手サノフィから90億ドルでの買収提案を受けていたが、評価が低すぎるとして合意を拒否していた。メディベーションの買収にはサノフィとファイザーのほか、米バイオ製薬のセルジーン(Celgene)や同じ米国のメルク(Merck)、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)も関心を示していたと報じられている。

手に入れた「資産」

年間の卸売価格が平均12万ドル程度とされる「エンザルタミド(イクスタンジ)」は、過去1年間の売上高が22億ドルに上っている。ファイザーはサノフィよりも50億ドル多い金額を提示して手に入れたエンザルタミドについて、ジョンソン・エンド・ジョンソンの前立腺がん治療薬「ザイティガ(Zytiga)」のジェネリック薬とも十分に競争できるものになると見込んでいる。

また、今回の買収によってファイザーは、メディベーションが開発中の乳がん治療薬、がん細胞のDNA修復を阻害する「タラゾパリブ(Talozaparib)」も取得することになる。

これらの薬はどちらも、素晴らしい「資産」だ。ファイザーは今回の買収により、抗がん剤関連事業を現在の倍近い50億ドル程度の規模にまで拡大。同分野の大手セルジーンに迫る水準とする見通しだ。

編集=木内涼子

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