世界最大の配車アプリ連合「ウーバーx滴滴」 評価額は3兆5000億円に

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ウーバーは8月1日、中国事業を同国の配車アプリ最大手「滴滴出行」(ディディチューシン)に売却することを発表した。これまで中国で積極的なサービス展開を図ってきた同社が事業拡大を断念したことに、業界関係者らは驚きの声を上げている。

滴滴は立ち上げから2年が経つウーバーの中国事業を買収した上で、10億ドルをウーバー本体に出資する。一方のウーバーは事業売却と引き換えに滴滴の株式を受け取り、同社の筆頭株主になる。ディールの詳細は以下の通りだ。

・直近の資金調達ラウンドでの評価額は、ウーバーの中国事業が約70億ドル(約7,300億円)、滴滴が約280億ドル(約2兆9,000億円)で、統合後の滴滴の評価額は350億ドル(約3兆5,400億円)となる。事業売却によりウーバーと、ウーバーの中国事業に出資していた中国企業は、滴滴の株式の20%を取得する。

・この20%の持ち分の内訳は少し複雑だ。滴滴は声明の中で、「ウーバーは合併会社の優先株式の5.89%を取得する。これは、滴滴の経済的な持分の17.7%に相当する」と述べている。この他、ウーバーの中国事業に出資していた中国の検索最大手「百度」(バイドゥ)らは滴滴の経済的な持分の2.3%を得る。

・統合後の滴滴の筆頭株主はウーバーとなる。他にも中国IT業界の3巨頭バイドゥ、アリババ、テンセントや、5月に10億ドルを滴滴に出資したアップルなど、世界の名だたる投資家や企業が滴滴の株主に名を連ねることになる。

・今回のディールを機に、ウーバーのカラニックCEOが滴滴の取締役に、滴滴の創業者である程維がウーバーの取締役に就任する。

・滴滴がウーバーに出資するに当たっての評価額は680億ドル(約7兆500億円)と、非上場のテクノロジー系スタートアップとしては史上最高額となる。

・滴滴は、今後も中国でウーバーブランドを残して独立したオペレーションを維持するしている。ウーバーは、グローバルブランドとして認知度を高めたいと考えており、中国市場で自社ブランドのアプリを残すことを望んだことは驚くに値しない。しかし、滴滴は「双方のチームが持つ管理や技術のノウハウを統合する」と述べており、ウーバーの中国事業は実質的には滴滴に吸収される形になると思われる。

・滴滴はこれまでウーバーのライバルであるリフト、インドのOla、東南アジアのGrabと資本業務提携を締結している。滴滴は、「今後もグローバルパートナーとの協業を続ける」との声明を発表しているものの、今回の件でこれら3社とのパートナーシップは宙に浮いた状態だ。

・ウーバーの中国事業は800人の従業員を抱え、60都市でサービスを展開している。1週間当たりの配車台数は4,000万台となっている。一方で滴滴出行は400都市で事業を展開し、1日当たりの配車台数は1,400万台に達する。このうち1,100万台はタクシーではなく個人運転手によるライドシェアサービスとなっている。

編集=上田裕資

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