今年を代表するトレンドは中国企業の積極的な海外投資だろう。アリババはロサンゼルス北部のパサデナにオフィスをオープンし、『ミッション・インポッシブル』に出資するなど、ハリウッド映画界に急接近している。バイドゥ(百度)はニューデリーにオフィスを構え、イスラエルでテック企業3社に投資するとともに、日本のネイティブ広告配信企業popInを買収。米国ではコンテンツデリバリーネットワークのCloudFlareと位置情報サービスのIndoorAtlasと提携した。バイドゥのモバイルアプリ事業の今年後半の売上高は、今年前半から600%以上拡大した。
ソーシャルメディアをコア事業とする人人網(レンレンワン)は多角化に動き、ソーシャル金融を手掛けるサンフランシスコ企業SoFiに1億5000万ドル(約180億円)を出資した。一方小米(シャオミ)はインドやイスラエルにR&Dセンターの開設を計画する一方、インドと南アジアマーケットへの進出を強化している。
中国内での企業合併も特筆すべきものが多い。今年初めには中国のタクシー配車アプリ滴滴打車(ディディダーチャ)と快的打車(クァイディダーチャ)が合併。続いて旅行サイトのQunar(去哪儿)とシートリップ(携程)、共同購入サイトの大衆点評と美団も手を組んだ。さらにアリババはオンライン動画サイトYoukuTudouを買収し、バイドゥは糯米を買収したグループ企業に投資を行った。
続いてインド企業を見てみよう。インドの電子商取引最大手フリップカート・インターネットは2014年にオンラインファッション通販のミントラ(Myntra)を買収したのに続き、今年はマーケットプレイスとオークションのスタートアップWeHive Technologieに出資。さらに、モバイル広告のAdiQuity、マーケティング関連のAdiQuityを次々に買収した。
カーシェアリングアプリのOla Cabsはライバル企業のTaxiForSureを、オンラインフード配達のFoodPandaもライバル企業JustEatIndiaを買収した。また、アマゾンはインドを海外最大の市場とみなし、オンデマンドサービスHousejoyに2200万ドルの投資を行った。
市場価値が10億ドルを超えるユニコーンは中国、インドでも拡大している。世界には130を超えるユニコーンがあるが、18社は中国企業でその数は昨年の11社から増加した。上位にはスマートフォンメーカーの小米、タクシー配車アプリの滴滴快的(ディディクァイディ)、フィンテックの上海陸家嘴国際金融資産交易市場(陸金所)、ドローンメーカーの大疆創新科技(DJI)が入った。フリップカートもランクインしている。
中国企業の株式非公開化も、今年の特筆事項だろう。セキュリティソフトウェアの奇虎360は今月中旬、同社トップとセコイア・キャピタル・チャイナ、中国平安保険に93億ドル(約1兆1160億円)で身売りし株式を非公開化した。同社のように非公開化に動いた企業は20社を超える。
中国、インドで人気を博したビジネスモデルが周辺国に波及したのも今年の特徴だ。インドネシアではバイク配車アプリGo-Jetや旅行予約サイトTraveloka、タイではソーシャル取引プラットフォームのSoftbaked.が新鋭として存在感を高めている。