クールビズというキャンペーンを環境省が始めたのが2005年。第二次小泉内閣のときで、環境大臣は今の都知事、小池百合子氏だった。当初の目的は冷房代節約のためだったが、あれから20年、地球温暖化が進んで夏が暑く長くなり、従来のクールビズでは対応しきれなくなってきた。
ビジネスパーソン向けファッションブランド、プラステは、20歳から59歳の働く男女500人を対象に夏のオフィスファッションに関する意識調査を実施した。それによると、ほぼ半数の人たちが、環境省が当初定めたクールビズ期間である6月から9月よりも長くクールビズスタイルで勤務していることがわかった(現在は期間は定められていない)。また、企業の服装規定は気候にあわせて変えていくべきだと考えている人が9割近くにのぼった。

近年の夏の気候をどう感じているかとの質問には、約6割が気温が上がったと感じ、約半数の人たちが、夏の終わりが遅くなった、夏の始まりが早くなったと感じていると答えた。事実、クールビズが始まった2005年と2024年の気候を比較すると、東京都の平均気温は春が1,7度、秋が1.2度上昇し、夏日が34日、真夏日が26日、猛暑日が16日増えている。
クールビズの意識が定着し、暑い時期はこの程度の軽装まではオフィシャルな場でも許されるだろうという共通の認識も定まってきたように見える。ノーネクタイ、ジャケットなし、半袖シャツ、ポロシャツ、つま先の出ないサンダルなどは、一般的に許容されると考える人は多い。しかし、もし服装規定がなかったら何を着て働きたいかを尋ねると、これらの服装の人気はがくっと落ちる。

たとえば「ネクタイなし」の場合、一般に許されると感じている人は62.4パーセントだが、規定がなくても「ネクタイなし」がいいと考える人は39.2パーセントにとどまる。つまりその差は、本当は「ネクタイなし」も嫌だと感じている人たちの割合と言える。反対に、規定がなければ積極的に着用したいもの、つまり「本音」のクールビズとしては、Tシャツ、ハーフパンツ、つま先が出るサンダルがあげられた。

小池環境大臣のクールビズ提言に先立つこと26年、1979年には当時の大平正芳総理大臣が「省エネルック」を提案し、半袖の「省エネスーツ」を着て国会に現れたことがあった。ごく一部の大臣も仕方なくお付き合いしていたが、一般にはまったくヒットせず、すぐに消えてしまった。半袖だけどネクタイは締めているという、今思えば冗談のような服装だ。当時はそれで十分に涼しかったようだが、もはやそんなものでしのげる時代ではなくなった。ビジネスパーソンが会社のロゴ入りTシャツで営業に出かける日は近い。