従業員の退職により経営が破綻する企業の「従業員退職型」倒産の件数が、2024年には87件と過去最多を記録した。これには、物価上昇や転職市場の活性化が大きく影響している。
帝国データバンクは、2024年の人手不足による倒産のなかでも「従業員の退職を要因とした人手不足」が原因となったもの(負債1000万円以上の法的整理を行った企業)に関する調査結果を発表した。同年の人手不足倒産は342件にのぼったが、そのうち従業員退職型は87件。人手不足感が高まった2019年には一時的に71件と跳ね上がったが、今回はそれを上回った。前年からは30件増となり、増加率も上昇している。

業種別では、もともと定着率が低いサービス業(ソフトウェア、ITを含む)が最多で31件。次に多いのが建設業で18件。設計者や施工監理者など業務に欠かせない有資格者の退職が原因となるケースが目立つという。製造業と運輸・通信業もはじめて年間10件を超えた。

物価上昇を受けて従業員からは賃上げを求める声が高まっている。大手を中心に待遇改善に乗り出す企業も増えているが、賃上げしたくてもできない中小企業では、それに嫌気がさした役員や従業員が退職してしまう。転職市場が活性化し、比較的容易によりよい条件の企業に転職できるようになったことも、退職に拍車をかけているようだ。賃上げができる企業とできない企業との二極化が進み、「賃上げ難倒産」が2025年には増加する恐れがあると帝国データバンクは分析している。