「誠に遺憾です」の意味とは?
大変残念に思う気持ちを敬意をもって表す言い回し
「誠に遺憾です(まことにいかんです)」は、事態の展開や結果に対し「非常に残念」「不本意」という感情を丁寧に示す表現です。日常的な言い回しでいう「本当に残念」「非常にがっかり」といった趣旨を、ビジネスや公式の場面でよりフォーマルに伝える場合に使われることが多いでしょう。
「遺憾」とは、期待や思惑が外れてしまい“悔やむ”“嘆く”というニュアンスを含んでおり、そこに「誠に」が加わることで、その残念さが一層強調されます。特に公的発表や謝罪文など、オフィシャルな状況での使用例がよく見られます。
「申し訳ありません」との違い
「申し訳ありません」と「誠に遺憾です」は、どちらもネガティブな事態への反応を示すフレーズですが、意味合いが異なります。「申し訳ありません」は主体的に謝罪する言葉(自分のミスを認めて詫びる)である一方、「誠に遺憾です」は“事態が不本意である、深く残念”という感情を表すもの。
必ずしも自分が原因というわけではなく、外的要因や第三者の行いに対して遺憾の意を表するケースも多いです。例えば、「今回のご意見をいただき、誠に遺憾に感じております」と言えば、“残念な状況”に対する気持ちを述べているだけであり、直接的な謝罪とは少し違うニュアンスになります。
ビジネスシーンでの使い方
謝罪やお詫びを正式に伝える場合
ビジネスの場面でトラブルが発生したり、顧客に対して不都合が生じてしまったときに、「誠に遺憾です」と言うことで“会社として好ましくない、深く残念に思う”姿勢を表すことができます。例えば、製品不良や納期遅延などが起きたとき、まずは「誠に遺憾です」と述べて状況を重く受け止めていることを示し、その後に具体的な再発防止策や補償内容を伝えるのが一般的でしょう。
ただし、本当に自社に非がある場合は、単に「遺憾」を使うだけでなく、「深くお詫び申し上げます」や「申し訳ございません」というストレートな謝罪表現を併用しないと、相手の不満を解消しきれない可能性があります。「誠に遺憾です」はあくまで“強い残念の意”を示す表現と認識しておきましょう。
クレーム対応やトラブル報告の場面
クレームを受けた際の初動対応や、上司へのトラブル報告の中でも「誠に遺憾です」は活用されます。たとえば、問題が発生した背景を説明したうえで「このような事態となり、誠に遺憾です。今後の対応策については~」と続ければ、自分たちが事態を深刻に考え、真摯に受け止めていることを周囲にもアピールできます。
しかし、クレーム対応において、相手が明確な謝罪を求めている場合は「誠に遺憾です」だけで終わらせず、適切に謝罪表現や改善策を提示することが不可欠です。使用タイミングを誤ると“責任逃れではないか”と捉えられる恐れがあるため注意しましょう。
注意点と使いどころ
謝罪の代わりにならない場合がある
「誠に遺憾です」は多くの場合、状況そのものが残念であるというニュアンスに留まります。つまり、“自分たちに責任があるか否か”については必ずしも言及しない言葉です。謝罪が必要なケースでは、相手の被った損害や不便に対する責任を明確に認めつつ、「申し訳ございません」と合わせて使うか、別途謝罪表現を加えるほうが妥当です。
例として、公的な謝罪会見などで「今回の結果は誠に遺憾です。しかし、この度の事故につきましては当方にも非がありますので~」と続ける形なら筋が通りますが、もし「誠に遺憾です」だけで終わると真の謝罪が欠如している印象を与え、相手の心証を悪くする可能性があります。
相手の気持ちへの配慮を踏まえて使う
ビジネスでは敬意や配慮をもって相手に接することが求められますが、「誠に遺憾です」は突き放した感じを与えるリスクも否めません。まるで“他人事”のように感じられるケースがあるからです。
対面や電話で使う場合は、声のトーンや表情などを合わせて相手に誠意を伝える必要があるでしょう。文章上では「誠に遺憾ではありますが」などとだけ書くのではなく、具体的な状況と再発防止策を添えることで、“本当に申し訳ないと思っている”印象を伝えやすくなります。
類義語・言い換え表現
「心苦しく思います」「深く残念に思います」「不本意ながら」
「誠に遺憾です」の類義語・言い換えとしては、下記のような表現が挙げられます。
- 心苦しく思います:相手に対して申し訳ない気持ちや罪悪感を感じている
- 深く残念に思います:状況がこうなってしまったことを大変残念に感じている
- 不本意ながら:意図していない結果であるが故に“本来望ましくないがこうなってしまった”を示す
これらはいずれも、「結果が望んでいたものとは違い、つらい」「本来はこうなるべきではなかった」感情を表す点で共通しています。より直接的に“心の痛み”や“残念さ”を示したいなら「心苦しく思います」、客観的に判断するなら「深く残念に思います」と使い分けが可能です。
「申し訳なく存じます」「お詫びのしようもありません」
また、謝罪の意をより明確に含めたい場合には、「申し訳なく存じます」や「お詫びのしようもありません」といった表現が考えられます。
- 申し訳なく存じます:相手に迷惑をかけた点を素直に認め、詑びる気持ちを伝える敬語表現
- お詫びのしようもありません:きわめて強い謝罪の表現で、深刻なミスや大きな不手際を起こした際に用いられる
これらは「誠に遺憾です」よりも、はっきりと謝罪の意を打ち出すニュアンス。事態の重大性や相手の受けた損害に応じて選ぶとよいでしょう。
例文で見る「誠に遺憾です」の使い方
ビジネスメールや文書での例
以下に「誠に遺憾です」を使ったビジネス文章の例を示します。謝罪や残念な事態を述べる際にどのように用いられるか、参考にしてください。
- 「この度はご不快な思いをさせてしまい、誠に遺憾です。早急に原因究明を行い、再発防止に努めてまいります。」
- 「弊社担当者の連絡不備によりご迷惑をおかけしてしまったこと、誠に遺憾に存じます。今後は運用ルールを見直し、改善を図ります。」
- 「製品不具合に関するご指摘をいただき、誠に遺憾の極みですが、すでに修正対応を開始しておりますので、続報をお待ちください。」
これらの例文では“相手に対して事情説明や謝罪をする”という文脈で「誠に遺憾です」を使うパターンが主です。あくまで“状況が残念である”としつつも、あわせて対策や改善策を述べることで誠実な対応を示している点が大事といえます。
公式発表や謝罪会見での例
企業や団体がメディア向けに公式発表を行う際、トップや広報担当者が次のように表明する場合があります。
- 「このたびの不祥事により、社会の皆様に多大なるご心配をおかけし、誠に遺憾に思っております。深くお詫び申し上げます。」
- 「調査の結果、本事案は当社の管理不足に起因したと判明し、誠に遺憾な状況であると重く受け止めています。迅速に対処策を講じてまいります。」
ここでは「誠に遺憾」を用いて“企業が本件を深刻に受け止めている”という姿勢を示しつつ、必要に応じて謝罪や改善策をセットで述べています。特に社会的影響が大きい問題の場合は、“どれだけ事態を重大視しているか”を表すためにも「誠に遺憾」というフレーズが効果的に用いられるのです。
まとめ
「誠に遺憾です」は、ビジネスや公的な場で“不本意な結果や事態に対する深い残念の気持ち”を表す際に使われる敬語表現です。謝罪そのものではなく、“状況が非常に残念”であることを強調する言葉であり、自社に非がある場合は、別途「申し訳ございません」というフレーズを併用するのが望ましいでしょう。
クレーム対応やトラブル発生時に“会社としてこれを許容できない・喜ばしくない”という意図を示す一方で、あまりに使い過ぎると形式的な印象を与える恐れもあるため、正しい場面とタイミングで用いる必要があります。類義語として「心苦しく思う」「深く残念に思う」「申し訳なく存じます」なども視野に入れ、状況や相手に最適な言葉を選ぶのが円滑なコミュニケーションの鍵と言えるでしょう。