「その節は」の意味とは?
過去の出来事に対する感謝や謝意を伝える言葉
「その節は」とは、過去の特定の時期や場面でお世話になったり、助けてもらったりしたことに対して、改めて感謝や謝意を示す表現です。「先日は」と似たニュアンスもありますが、「その節は」のほうが多少フォーマルであり、特定の機会に相手が尽力してくれたことをしっかり意識して伝えるときに使われます。
たとえば、仕事上の相談を受けた際に親身に対応してもらったり、イベントでサポートをお願いしたりして後日挨拶するときに「その節は大変お世話になりました」というと、過去の出来事をきちんと覚えていて、今になっても感謝していることを強調できます。
「先日は」との違い
「その節は」と「先日は」は、どちらも過去の出来事を指す言葉ですが、ニュアンスが微妙に異なります。「先日は」は、比較的近い過去を表す傾向があり、日付を特定できるような出来事が対象です。一方、「その節は」は、その出来事が起こった具体的な日時を強調するよりも、「あのとき」というタイミングにおける全面的な厚意や対応に感謝する意を含みます。よりフォーマルで敬意を込めた印象を与える言い回しといえるでしょう。
ビジネスシーンでの使い方
改めて感謝やお礼を述べる場面
ビジネスにおいて「その節は」は、取引先や上司、社外の関係者に対して、過去にお世話になった機会を指しながら感謝を述べる際に多用されます。メールや手紙などで冒頭や結びに入れると、丁寧さと誠実さを演出できます。
具体的には、プロジェクトに協力してもらった企業の担当者と再びやり取りをする際に、「その節はご協力いただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」と述べると、相手に好印象を与えやすいでしょう。単に「ありがとうございました」と書くよりも、以前の出来事に遡って感謝していることが伝わります。
交渉やフォローアップにおけるひとこと
ビジネス交渉後のフォローアップメールなどでも、「その節は大変お世話になりました」と冒頭に書くことで、相手が協力してくれた記憶を呼び起こしながらスムーズに本題へ移れます。特に長期間やり取りが途絶えていた取引先や顧客に再連絡を取る時、過去に大きなサポートをもらった話題をさりげなく織り込むと効果的です。
また、電話や直接対面する機会でも、「先日は」よりも「その節は」の方が少し改まった雰囲気を伴うので、目上の人や立場が高い相手に対しても失礼なく使えます。「前回お世話になったときは…」というシンプルな言い方よりも、一歩先の礼儀を感じさせる表現です。
注意点と使い分け
時系列を明確にする場合は「先日は」の方が適切なケースも
「その節は」には日時を明示しない曖昧さが含まれているため、具体的な日付や時期を相手に思い出してもらいたい場合には「先日の商談時は」とか「先週のミーティングでは」などの表現を用いるとスムーズに伝わります。
一方、「その節は」は「詳しい日時はさておき、あのときのお礼を今も大事に思っている」というニュアンスを出しやすいというメリットがあります。状況に応じてどちらを使うかを選ぶことで、より的確に思いを伝えられるでしょう。
深い感謝を示したい場合に有効
「その節は」には敬意や感謝が含意されるため、わざわざ使うからには「強い感謝を再度伝えたい」気持ちがあると解釈できます。単なる近況報告や軽い挨拶で済ませたい場合には「先日はありがとうございました」のほうが自然かもしれません。ただし、より改まった言い方を意識するなら、あえて「その節は」を選んでみるのも選択肢のひとつです。
また、丁寧さが求められる場面ほど「その節は」は適した表現になります。特に取引先や社外の人と改めて会話をするときに、「その節はご多忙のところ大変助かりました」と一言添えるだけで、相手への感謝がいっそう明確になるでしょう。
類義語・言い換え表現
「先日は」「あのときは」「以前は」
「その節は」を別の表現に変える場合、代表的な言い回しとしては「先日は」「あのときは」「以前は」が挙げられます。どれも過去の出来事を指し示す点で共通していますが、フォーマル度やニュアンスに違いがあります。
- 先日は:比較的近い過去を明示的に指す
- あのときは:会話の流れで具体的なエピソードを思い出させる
- 以前は:いつ頃かを特定しないまま、ざっくりと昔を指す
ビジネスで多用されるのは「先日は」。一方、「その節は」は「先日は」よりもややフォーマルで、時期を特定せずに丁寧に振り返りたいときに向いています。「以前は」はさらにざっくりとした過去全般を振り返るイメージがありますが、あまりに広義すぎると相手に伝わりづらいかもしれません。
「先日のお礼」「あのときのおかげで」といったフレーズも
もう少し具体的に言いたい場合には、「先日の件では大変助かりました」「あのときのおかげでスムーズに進みました」など、内容をはっきり示すフレーズにするのも手です。直接「その節は」という言葉を使わなくても、過去の出来事に対する感謝を表すことができます。
ただし、「その節は」よりもカジュアルになる可能性があるので、ビジネスメールやあいさつ回りなどフォーマルな場面では、やはり「その節は」が雰囲気に合う場合が多いでしょう。具体的な出来事と組み合わせれば、より記憶を呼び覚ましやすく、感謝が伝わりやすくなります。
実際に使える例文集
ビジネスメールや書面での活用例
以下に、「その節は」を使用したビジネスメールや書面向けの例文を挙げます。必要に応じて文面をアレンジするとよいでしょう。
- 「その節は、大変お世話になりました。改めて御礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
- 「その節は急なお願いにもかかわらず、ご丁寧に対応いただきありがとうございました。おかげさまでプロジェクトも無事に完了しました。」
- 「先日はありがとうございました。特に、その節は当方の都合に合わせていただいたことで、予定通り進めることができました。」
ポイントは、「他の日付との比較ではなく、あくまで相手の厚意そのものに焦点を当てる」点です。時系列を細かく述べるより、あの時は助かった・感謝しているという意味合いを強調できます。
口頭での会話や挨拶の例
メールだけでなく、口頭で上司や取引先に対しても「その節は」を使う機会があるかもしれません。以下に口頭での使用例を示します。
- 「○○様、先日はお忙しい中、時間を作ってくださってありがとうございました。その節は本当に助かりました。」
- 「その節は色々とご指導いただき、本当に感謝しています。今後ともよろしくご指導お願いいたします。」
- 「お久しぶりです。以前お話を伺ったときは本当に勉強になりました。その節はありがとうございました。」
口頭で使うときには、文章に比べて柔らかい印象を与えやすいです。相手の目を見て笑顔で伝えるだけで、より一層の好印象につながるでしょう。特に初対面ではない相手に久しぶりに会うとき、前回お世話になった内容を示唆する意味でも適しています。
まとめ
「その節は」は過去の特定の時期に相手が尽力してくれたことや助けてくれたことに感謝する表現です。ビジネスシーンにおいては「先日は」に比べてややフォーマルな印象を与え、相手がしてくれた行為を強調する効果があります。
一方、時期や日付を具体的に思い出してほしいときには「先日は」のほうが明確なこともあり、両者を使い分けると便利です。「その節は」は主にお礼や感謝を再度伝えたい場面で有効で、メールや書面、あるいは上司や取引先との口頭のやり取りでも違和感なく使えます。
さらに丁寧さを加える際には、「その節は大変お世話になりました」「その節はご尽力いただきました」といった形で、相手への感謝を具体的に盛り込むとより好印象です。特に目上の方や初対面ではない相手と再会したときには、「あのときのご助力に感謝を忘れていません」というメッセージを伝える手段として活躍してくれるでしょう。