「もとい」の意味とは?
言葉が持つ役割
「もとい」とは、日本語で発言を修正したいときに用いられる言葉です。具体的には、話し始めてから間違いや言い間違いに気づいた際、あるいは方向性を変更したい際に「もとい」というフレーズを挟み、直前の発言を訂正する役目を果たします。会話だけでなく文章表現でも使われる場合があり、特にカジュアルからビジネスシーンまで広い範囲で目にすることができます。
この「もとい」は「本来の意味に立ち返る」「そもそも正しくは」というニュアンスを含んでおり、漢字表記では「元い」や「本い」などと書かれることがありますが、ひらがなで「もとい」と書くのが一般的です。口頭では「もとい、○○と言いたかったのですが」という流れがよく使われます。
言い換えや修正の際に使われる理由
誰しも会話中に、思わず違う単語を使ってしまったり、誤った数値を伝えてしまったりすることがあります。そうした際にすぐ訂正できる言葉として「もとい」は便利です。「ごめんなさい、訂正します」と言うよりも短く、自然に言い直せるため、特に口頭のやり取りで頻出します。ビジネスメールなどでも、相手に対して丁寧に表現したい場合に「もとい」を書き加えることで、“ここから先は正しい内容です”と示す効果が得られます。
ビジネスシーンでの使い方
会議やプレゼンでの活用
ビジネス会議やプレゼンテーション中にも「もとい」を使うシーンは少なくありません。例えば、資料の数字やデータを読み上げるときに誤りに気づいたときや、話の流れを修正したいときに「もとい」という一言を挟むだけで、スムーズに訂正が行えます。口頭で「失礼しました、ただいまの数字は○○でした」よりも、さりげなく「○○円の予算で進めております。もとい、正しくは○○円です」という方が、聞き手に違和感を与えにくいケースもあります。
ただし、余りに頻繁に「もとい」を連発すると、準備不足という印象を与える恐れがあります。あくまで必要なときのみ用い、聞き手の集中力を途切れさせないように配慮することが肝心です。短い訂正なら「もとい」で済ませ、長めの修正が必要なら一度お詫びを挟むのもマナーとして有効でしょう。
ビジネス文書やメールでの例
ビジネスメールなど文章上で「もとい」を使う場合は、あらかじめ誤字脱字のチェックをしていても、後から修正が発生することがあるため、以下のような形で訂正を示すことがあります。例えば「先週末に完了予定とお伝えしましたが、もとい、今週中に完了予定となります」のように書くと、間違いから修正した事実をわかりやすく提示できます。
しかし、非常にフォーマルな文面(契約書類や公的文章)では、再送や改訂という形を取った方が信頼性を損なわずに済む場合があります。「もとい」は便利な一言である反面、ややカジュアル感も残るため、送付する相手の立場や場面に合わせて適切に使い分けるのがおすすめです。上司や取引先などとの重要なやり取りには、別途お詑びと訂正内容を整理した再通知を送るほうが無難でしょう。
「もとい」の正しい使い方のポイント
訂正箇所を簡潔にまとめる
「もとい」を挟んだ後は、ただちに訂正内容をわかりやすく伝えることが大切です。例えば「昨日の売上は1,200円…もとい、1,200万円ですね」と、少々誇張した例ではありますが、具体的な数値をポンと置き換えることで、聞き手はどこが修正箇所だったのかを明確に把握できます。
もし複数箇所を同時に修正する場合、ひとつの「もとい」で全部を説明すると混乱を招きかねません。その際は、箇条書きや再度改行を挟むなど、視覚的にまとめる工夫が求められます。口頭なら、「まず一点目は○○に訂正、二点目は○○です」と整理して伝えると、スムーズな修正が可能です。
過剰な使用を避ける
便利な表現であるがゆえに、思いつくまま何度も「もとい」を挟むと、聞き手が煩わしく感じる場合があります。会議の進行がスムーズに運ばなくなる原因になり得るため、事前準備を徹底し、やむを得ず生じた間違いのみを「もとい」でフォローする意識が必要です。
また、プレゼンや営業での説明中に何度も「もとい」を繰り返すと、「この人は正確性に欠けるのでは?」という印象を持たれかねません。どのタイミングで言うか、1回の会話に2回以上登場しない程度に抑えるなど、ある程度ルールを設けるとよいでしょう。
類義語・言い換え表現
「訂正します」「失礼しました」などの活用
「もとい」と似たような意味を持つ表現として、「訂正します」「失礼しました」が挙げられます。これらは状況や相手との距離感により、使い分けが可能です。特にビジネス文書では「もとい」をあまり多用せず、「○○に訂正いたします」「先の発言を訂正させてください」と書いたほうが丁寧な印象を与えるでしょう。
一方で口頭表現の場合、「失礼しました、○○でした」が「もとい、○○でした」とほぼ同じ役割を果たします。より正式な場面ほど「もとい」ではなく「失礼しました」「正しくは〜です」を使う傾向が強まります。社員研修や顧客説明など、改まったシチュエーションでは「もとい」を使わず、謝辞や訂正文言を先に述べる方が好印象でしょう。
「再度修正させてください」「言い直します」
さらに、相手に承諾を得る形で「再度修正させてください」「言い直します」といったフレーズを用いる方法もあります。特にオンライン会議やメールでのやり取りで、誤解が生じそうな点を改めて正す際には、「先ほどの部分をもう一度確認し、修正いたします」といった表現が丁寧で伝わりやすいでしょう。
ただし、あまりに長々と改まるとスピード感を損なうことも考えられます。適度な長さで誤りを訂正し、スムーズに本題へ戻るのが理想です。シーンに応じて「もとい」とカジュアルに言い直すか、「再度修正」を正式に行うかを判断しましょう。
実際に使うときの例文
ビジネスシーンの例文
「もとい」の使用場面をイメージしやすいよう、以下にビジネスシーンの例文を挙げます。これはあくまでイメージなので、実際の会議内容や数値は状況に合わせて書き換えてください。
- 「月次報告書の合計売上は200万円です。もとい、210万円ですね。訂正いたします。」
- 「この資料は課長へ提出予定です。もとい、部長へ直接お渡しするよう指示を受けましたので、対応をお願いします。」
- 「来週の会議は水曜日…もとい、木曜日に変更となりました。スケジュールを調整いただけると助かります。」
これらの例文では、まず誤った情報を提示してから「もとい」を挟み、正しい情報をすぐさま示しています。後半に「訂正します」「修正します」など補足の言葉を付けるとより丁寧な印象になるでしょう。
カジュアルな会話での例文
社内のラフなミーティングや友人との会話で「もとい」を使う場合は、次のような例が考えられます。
- 「明日のランチ、イタリアンどう? あ、もとい、和食がいいんだっけ?」
- 「お酒は日本酒がお好みでしたっけ。もとい、ワインでしたよね。」
- 「先ほどの案、もう却下されちゃったって話だったよ。もとい、他の部署がまだ検討中だったかも。」
カジュアルな場では「失礼しました」や「訂正します」よりも、短く「もとい」を使ったほうが自然に会話に溶け込むことが多いです。相手との関係性を踏まえながら、気軽に訂正ができるのが「もとい」の強みと言えます。
注意すべき点
フォーマルな文書には不向きな場合も
「もとい」は便利で簡潔な訂正表現ですが、稟議書や企画書、顧客向けの正式書類など、非常にフォーマルな文書には不向きとされることが多いです。上司や取引先に送る重要書類でいきなり「もとい」と書くと、どこか軽いイメージがついて回る可能性があるため、相応しくない場面では代わりに「訂正いたします」「再度お知らせします」といったフレーズを選ぶ方がよいでしょう。
特にお詫び文書やクレーム対応においては、失礼があってはいけません。カジュアルな印象を与えて誤解を生まないよう、状況に合わせた適度な文章表現を心がけることが大切です。
連発を避け、会話の流れを重視する
先述の通り、「もとい」の連発は会話のテンポを崩しかねません。1回や2回であればスムーズな修正として機能するものの、何度も言い間違えるたびに「もとい」を繰り返すと、周囲から準備不足と見なされるリスクがあります。特に重要なプレゼンや商談では可能な限り資料を再確認し、誤り自体を最小限に抑える工夫が求められます。
また、一度の会話で複数の誤りが発生した場合、まとめて「失礼しました、今の部分は〜に訂正いたします」と言う方がスマートな場合もあるでしょう。シーンや相手の反応に応じて、最適な訂正アプローチを選ぶことが大切です。
まとめ
「もとい」は、会話や文章の中で誤った情報や言い間違いを訂正したいときに使われる言葉です。短くかつ自然に修正できるので、口頭でのプレゼンや打ち合わせ、あるいはメールなどでも一定の場面で重宝されます。特にカジュアルなシチュエーションでは「失礼しました」よりも柔らかい印象を与えることができるでしょう。
一方で、フォーマルな文書や公的なやり取り、またはクレーム対応などではやや軽めの表現と受け取られる場合もあります。そのため、「訂正します」「再度ご連絡いたします」といった、より丁寧で正式な表現に置き換えるのが望ましいケースも少なくありません。
最終的には、ビジネス相手や場面に応じた言い回しを的確に選ぶことが肝要です。準備不足を感じさせるような連発を避け、あくまでスピーディーかつ的確に訂正したいときに「もとい」を取り入れることで、円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。