「言伝を預かる」の意味とは？
「言伝を預かる（ことづてをあずかる）」とは、相手から第三者への伝言やメッセージを受け取り、自分がそれをしかるべき相手に届ける行為を指す表現です。 古くから用いられる言葉であり、「ことづて」は「言付け」と書くように、「何かを言付ける」「誰かの言葉を託す」というニュアンスを持ちます。 「預かる」は「引き受ける」「保管する」といった意味を含んでおり、まとめると「誰かの言葉を大切に受け取り、別の人に伝える」行為に敬意を払った言い回しになっているのです。
日常会話でも「伝言を預かる」と言うことはありますが、「言伝を預かる」はややかしこまった響きを持つため、ビジネスや改まった場面で用いられることが多いといえます。 単なる口頭でのリレーではなく、メッセージを正確に届けたり、相手の要望をしかるべき人物に間違いなく伝えたりする際に、「言伝を預かりました」というフレーズは重宝される表現なのです。
ビジネスシーンでの具体的な使い方
1. 社内外での伝言を受け取る場面
上司や取引先などから「◯◯にこれを伝えてほしい」と頼まれたとき、「わかりました、言伝を預かります」と返事することで、正式に伝言を引き受ける姿勢を示せます。 メールや文書でも、「○○様からの言伝を預かっております」という形で表記すると、相手に対して品位を保ちつつ、正確な伝言であることを伝えられます。 口語的には「伝言を承りました」と似たニュアンスですが、「言伝を預かる」はより古風で敬意を含んだ言葉遣いといえるでしょう。
2. 取引先や顧客からのメッセージを部署内で共有するとき
たとえば、顧客サポート部門が「お客様からクレームの言伝を預かりました」と報告すれば、そのクレームがどのような内容であるかを的確に把握し、担当部署へ確実に届ける意思を表すことができます。 このとき「伝言を受け取りました」「メッセージを受領しました」などの表現でも問題ありませんが、「言伝を預かる」のほうがややフォーマルかつ重々しい印象となるため、相手の真摯な意図を強調したいときに好適です。
「言伝を預かる」を使う際の注意点
1. 正確さとタイミングが重要
相手の言葉を預かる以上、「誰が何を望んでいるか」を誤りなく理解し、速やかに届けることが欠かせません。 ビジネスでは情報の遅れや誤伝が大きな影響を及ぼす場合があるため、できるだけ早く、かつ正確に相手のメッセージを伝えるよう心がけましょう。 「言伝を預かったまま放置する」などの状況は信頼を損ねるため、注意が必要です。
2. 言葉遣いが古めかしく感じられる場合も
「言伝を預かる」という表現はやや古風で、現代ではあまり日常的に使う人が多くありません。 ビジネス文書やかしこまった場面では違和感なく通じるものの、同僚とのカジュアルな会話でしきりに使うと、かえって浮いてしまうかもしれません。 場面ごとに「伝言を承る」「メッセージを受ける」など、適宜言い換えて対応するとよいでしょう。
類義語・言い換え表現
1. 「伝言を承る」
「承る（うけたまわる）」はビジネス敬語として定番の謙譲語で、「相手の依頼や申し出を控えめに受ける」という意味合いを持ちます。 「伝言を承りました」は「言伝を預かる」とほぼ同様の内容ですが、より現代的で広く馴染み深い表現です。 電話応対などで「◯◯様のご用件を伝言として承りました」と言うと、わかりやすく事務的な報告になります。
2. 「お伝えいただきました内容を預かりました」
直接的に「言伝を預かる」という語句を使わず、「◯◯様からお伝えいただいた内容を預かりました」と言い表す方法もあります。 この場合はあくまで「メッセージを受け取った」というニュアンスに留まるため、「言伝」の響きが古めかしいと感じる場面で活用するのがよいでしょう。 また、メールなどでも「お知らせいただいた件を預かり、◯◯部に連携いたします」と書けば、必要事項を確実に担当部署へ届ける姿勢が相手に伝わります。
3. 「メッセージを受領する」
「受領」は特に書類や商品、金銭などの受け取りを指す際に使われますが、口頭のメッセージについても利用可能です。 「メッセージを受領しましたので、後ほど担当者へお伝えいたします」という書き方は、ビジネスメールでもよく見られるパターンです。 「受領」は比較的フォーマルな響きで、社外のやり取りや公式文書で使用すると相手にしっかり受け止めた印象を与えられます。
例文で見る「言伝を預かる」
例文1：社内会議の連絡を別部署に伝える場合
先ほど◯◯部長より、来週の全体会議について追加の資料を用意してほしいとの言伝を預かりました。
詳細は追ってメールでご連絡いたしますので、取り急ぎチーム内で準備をお願いいたします。
この例では、部長が別の部署に依頼した「追加資料準備の要望」を「言伝を預かりました」と表現することで、丁寧に受け取った印象を与えつつ、依頼内容の重大さを示しています。
例文2：顧客からの伝言を同僚に伝える場合
◯◯社のご担当者から『契約書の改訂版を早めにいただきたい』との言伝を預かっています。
急ぎのご依頼のようなので、本日中に対応の目処だけでもお知らせいただけると助かります。
ここでは、顧客が望んでいるアクション（契約書の改訂版送付）を「言伝を預かっています」と報告する形です。 単純に「言われた」ではなく「言伝を預かる」を用いることで、顧客の意向を丁寧に扱っている様子を表しています。
使い分けのポイント
シチュエーションに合ったフレーズ選び
「言伝を預かる」はやや古風かつ正式な響きがあるため、あまり砕けた場面で多用すると、かえって不自然になる恐れがあります。 また、社外の相手とのやり取りでは、同様の意味をもつ「伝言を承る」「メッセージを受領する」などの表現と組み合わせて、文面や口調を柔軟に調整すると好印象です。 相手や場面に合わせて使い分けることが望ましいでしょう。
相手の意図を正確に把握し、速やかに伝える
「言伝を預かる」は、受け取るだけでなく「正確に内容を理解して、別の人へ伝える」という義務が伴います。 たとえば誤った内容や抜け漏れのあるまま伝えると、トラブルや混乱の原因になります。 ビジネスシーンでは、確認の電話やメールを入れるなどして、正確性を確保しつつスピーディーに動くことが重要です。
まとめ
「言伝を預かる」は、伝統的で敬意を示す響きをもつ言葉で、他者からのメッセージや依頼を大切に受けとめ、しかるべき相手に届けるニュアンスを持っています。 ビジネスシーンでは、「伝言を承る」や「メッセージを受領する」とほぼ同様の意味合いを持ちつつ、やや丁寧な印象を添えられるフレーズとして活用可能です。
ただし、表現が古風であることや、定型的な敬語が多くなりがちな文章で使うと、くどいと感じる人もいるかもしれません。 同じ意味を伝える表現である「伝言を承りました」「お伝えいただいた内容を預かりました」などをシーンによって使い分けると、より自然でスムーズなコミュニケーションが実現できるでしょう。 何より重要なのは、受け取ったメッセージの正確性と伝達の迅速さです。
「言伝を預かりました」と言った以上は、相手の要望や伝言をきちんと理解し、遅滞なく担当者やチームに伝える行動が求められます。 ビジネスにおいてミスや遅れが生じるのはリスクが大きいため、適切に確認を取りながら処理する姿勢が大切です。
