「踏まえて」の意味とは？
「踏まえて」は、文字通り「足で踏む」という動作から派生した表現で、「ある情報や事実、前提などを考慮に入れて次の行動や判断を行う」という意味です。 ビジネスでは、過去のデータや会議の結果、お客様からのフィードバックなどを「踏まえて」新たな施策を決定する、といった場面でよく使われます。 単に「考慮する」だけではなく、より強く「しっかり踏み台にして次のアクションを起こす」というニュアンスを表現できるのが特徴と言えます。
例えば、マーケティング施策を検討する際に「昨年度の売上データを踏まえて、新商品のターゲットを見直す」という形で使います。 これは「昨年度の売上データをしっかり土台として捉えたうえで、方針を変更する」という意味を相手に示すフレーズとなります。 「踏まえて」は、具体的な根拠や背景を大切にしながら判断・行動することを強調する点で、ビジネス文書や会話の場面で重宝される表現です。
なぜビジネスシーンで使われるのか
根拠を明示して説得力を高めるため
ビジネスにおいては、物事を判断する際に「どのような背景やデータを参照しているのか」を示すことが重要です。 「踏まえて」を使用すると、「以前に得た知見や現状の問題をしっかり押さえたうえで提案しています」という姿勢を示せるため、説得力や信用が増す効果があります。 相手は「ちゃんと現状を把握しているのだな」と感じやすくなるのです。
論理的な展開をわかりやすくするため
会議やプレゼンテーションでは、「Aという事実を踏まえてBを導き出し、それによってCという対策を取りましょう」という具合に、段階的な説明が必要です。 このとき「踏まえて」を用いることで、「Aを起点にBに進む」という流れが明確に伝わります。 相手は各ステップのつながりをスムーズに追いやすくなり、結果的にコミュニケーションが円滑になるわけです。
ビジネスシーンでの具体的な使い方
会議での発言やプレゼンテーション
会議中に「先月の顧客アンケートを踏まえて、新しい販売戦略を検討したいと思います」と述べると、「アンケート結果を具体的根拠として、戦略を考える」という積極的アクションが伝わります。 プレゼン資料でも、「A社との競合状況を踏まえて、次期プロモーションの方向性を再評価する」といった表現で使えば、プレゼンのテーマと根拠の関係性が明確になるでしょう。
メールや文書で方針を説明する場面
上司や取引先に送る提案書・報告書の中で「前回のミーティング内容を踏まえて、新プランの概要を再度まとめました」と書くと、相手は「前回話し合った内容をしっかり考慮してプランを作り直したのだな」と理解しやすくなります。 相手との合意形成やコンセンサスを取る際にも、この表現で背景を示すと合意を得やすいです。
「踏まえて」を使う際の注意点
参照している内容を具体的にする
「◯◯を踏まえて」というフレーズだけでは、何を起点にしているのか相手がわからないケースがあります。 たとえば、「売上データを踏まえて」「顧客アンケート結果を踏まえて」「上層部の方針を踏まえて」など、どの要素を踏まえているのかを明確に記述するのがおすすめです。 具体性をもたせると、相手に意図がわかりやすくなるだけでなく、会話や文書の論理構成もスムーズになります。
結果とセットで説明する
「踏まえて」を使うときは、その「踏まえた結果どうするのか」を一緒に示すとより効果的です。 「売上減少傾向を踏まえて、新規顧客獲得の施策を強化いたします」といったように、踏まえた判断や行動を具体的に述べると、相手が次のステップを理解しやすくなるでしょう。 逆に、「踏まえてどうするの？」という疑問を残したままだと、コミュニケーションが不十分に終わってしまいます。
類義語・言い換え表現
「考慮して」
「考慮して」は「検討材料として頭に入れて判断する」という意味で、「踏まえて」と近い意味合いを持ちます。 ただし、「考慮して」は少し事務的・無機質な表現になりやすく、「踏まえて」はもう少し「ちゃんと足場にして動き出す」という感覚が強い違いがあります。 より深く影響を与える場面では「踏まえて」を選ぶと表現が力強いでしょう。
「前提として」
「前提として」は「◯◯をベースにして話を進める」というイメージを言い換えたもの。 「Aという事実を前提としてBを決定する」と言えば、「Aがあることは大前提、そこからBに行く」という論理構造を示せます。 「踏まえて」とはややニュアンスが似ており、状況によっては互換的に使える表現です。
「元にして」
「元にして」は「ある情報やデータを基盤として」という意味で、カジュアルな場面でも用いやすい言葉です。 「前回の結果を元にして、新しい計画を立てます」と使うと、ややフランクな響きで「土台として利用する」イメージを示します。 一方、「踏まえて」はよりフォーマル度や丁寧さが求められるビジネス文書にも馴染む表現です。
ビジネスでの例文
例文1：会議後のアクションプラン提示
先日の会議でいただいたご意見を踏まえて、次のステップとして新たなマーケティング施策を検討いたしました。
詳細については別途資料を添付しておりますので、ご確認のうえフィードバックをお願いできますでしょうか。
この例文では「会議での意見」をきちんと吸収したうえで、新しい施策を提案しているため、相手は「自分の発言がちゃんと反映されている」と感じやすくなります。
例文2：営業戦略の変更連絡
最近の市場動向を踏まえて、営業部では来月よりメインターゲットを若年層からファミリー層へシフトする予定です。
今週中に具体的な営業マニュアルを配布いたしますので、各チームで準備を進めていただきますようお願いいたします。
ここでは「最近の市場動向」が判断材料で、「踏まえて」を使うことで「動向をきちんと見たうえで戦略を変える」という根拠を明確化しています。
使い分けのポイント
対象となる情報を明示する
「◯◯（要因/データ/結果）を踏まえて」という形で、何を参考にしているか、何を根拠にしているかを先に示すとわかりやすいです。 例えば「先月の顧客アンケート結果を踏まえて」「上層部の指示を踏まえて」「市場調査の結果を踏まえて」など、具体的に書くほど相手に伝わりやすいでしょう。
結論やアクションに繋げる
「踏まえて」と言ったあとに「何をするか」を具体的に述べることで、メッセージを完結にまとめられます。 「〜を踏まえて…します」「〜を踏まえて…させていただきます」とすることで、「その結果どうしたいのか」が相手に明確に伝わるのがポイントです。
まとめ
「踏まえて」は、「ある情報や条件をしっかり足場にして、判断や行動を行う」という意味を持つビジネス表現です。 会議やプレゼンでの説明、メールや報告書の文章など、幅広いシーンで「何を根拠として話すのか」を示すために使われます。
ビジネスのコミュニケーションでは、論拠を明確にして「だからこうする」の流れを示すことが説得力を高める秘訣です。 「◯◯を踏まえて〜します」という構文を活用し、「何を見据えて」「何をベースに判断しているのか」を丁寧に示しましょう。
さらに「考慮して」「前提として」「元にして」といった類似の言い回しも状況に応じて使い分ければ、一層効果的な説明や説得が実現できます。 ビジネス文書やプレゼンで「踏まえて」を活用し、相手にきちんと理解される論理的なコミュニケーションを目指してみてください。
