大企業と中小企業の両方が、中間管理職をなくそうとしている動きについて考えてみよう。こうした「上司の削減」トレンドは、ホワイトカラーの労働人口を大幅に減少させている。
中間管理職が削減されている結果(レイオフは2023年と比べて3割以上多い)、Z世代にとっては、セルフリーダーシップ、自律性、個人の貢献へと、労働市場が大きくシフトしている。
英タイムズ紙が引用している調査によれば、18~27歳の75%は、上の世代に比べて、より長期的な仕事を探しているという。具体的には、Z世代は上の世代に比べて、同じ会社に2倍長く勤めたいと考えている。
ただし、こうした世代の希望と、実際の職場環境はバランスがとれていない。Z世代にとっては「キャッチ22」的な状況が生まれている。キャッチ22とは、ジョセフ・ヘラーによる1961年の同名の小説(邦訳:早川書房)に由来する言葉で、「互いに矛盾しあう条件」が存在する状況を意味する。不確実性の中で安定性を見つけようとすることは、その一例だ。管理職が消えつつあるときに、管理職の経験を積むことも、その一例となる。
以下では、2025年に、Z世代にとってキャッチ22的な状況を生み出す5つの要因を見ていこう。
1. 不安の増大と、「変化に備えること」の強調
作家兼社会心理学者のジョナサン・ハイトは、Z世代を「不安な世代」と呼ぶ。不安とは、意識の高まりから生じ、別の見方をすれば「想像力の誤用」といえる。企業と従業員は、こうした「想像力の誤用」にどう適応しているのだろうか?広範なレジリエンスの構築に取り組む組織、meQuilibrium(ミー・クイリブリアム)の創業者でもあるジャン・ブルースCEOは、米マサチューセッツ・テクノロジー・リーダーシップ評議会に対して、「2025年には、ビジネス変革のペースが加速し、その結果、不安が大幅に高まることが予測される」と語っている。「こうした不安は、適切なサポートとスキルがなければ、生産性や従業員の士気、組織全体のパフォーマンスを低下させるだろう」
ブルースによれば、鍵を握るのは適応力だ。「仕事の未来は、ただ変化に耐えられるだけでなく、変化に備える人が担うことになるだろう」
Z世代にとって、自分がどれほど「変化の準備ができているか」について考えてみよう。自分がこれまで、変化にどう対応してきたを示す物語を、誰かと共有できるだろうか? 実際、デジタル世代は、比類ない柔軟性と適応力を備えている。
筆者はコーチとして、クライアントがパフォーマンスを低下させるような不安に直面しているとき、私たちがいつも忘れていることを思い出してもらっている。それは、困難のさなかに発揮する能力だ。
思い出してほしい。(不安という課題を含む)すべての困難の中に、チャンスが存在している。そのチャンスとは、物事を新しい視点で見る機会だ。感情が高ぶるなかで臨機応変に立ち回ることは、変化に対する素晴らしい対処法となる。