少なくとも科学の分野では、私はそのようには感じていません。私たちの競合は、AI関連のラボよりもむしろ計算生物学に取り組む優れたスタートアップや研究者たちだと思います。そして、私はこの分野は複数の分野にまたがる知識が要求されるもので、簡単に参入できるようなものではないと考えています。科学というのは、単に飛び込めばなんとかなるような分野ではないのです。
DeepMindの内部ですら、初期の頃を振り返ると人々はよく「タンパク質構造の予測? それはシーケンス間の問題だろう。任せておけ、シーケンスの問題は得意だから」といっていました。しかし、実際にアイデアを試すと必ずうまくいきませんでした。そのとき、科学と機械学習が交わる地点で本気で取り組む必要があることを実感したのです。
これこそがDeepMindの大きな強みの1つであり、今後もそれが強みであり続けると思います。もちろん、他にも優れた研究所はたくさんありますし、多くのAIラボがすばらしいことに取り組んでいます。しかし、私たちは科学的な機械学習の分野で非常に優れた成果を挙げてきたと自負しています。
──最後に、今後取り組もうとしている科学的な課題の中で、最もエキサイティングだと思うのはどういうものですか?
大きく分けて2つあります。1つ目は、タンパク質の構造予測が新薬の開発、特に小分子薬やタンパク質の設計を通じて新たな可能性を開くことです。これは非常にエキサイティングなことで、今後の数年間で私たちは、これらの課題に対して定性的により優れたアプローチができるようになると思います。
2つ目は、AlphaFoldを通じて細胞についての理解が深まっていくことです。このツールは、タンパク質がどのように集合するのかを解明したり、より大規模なシステムの研究にも利用されています。このようなクリエイティブな使い方が増える中でAlphaFoldは、最終的に細胞についての科学的な理解を根本的に変えるはずです。私は、この進展がとても刺激的だと感じています。
(forbes.com 原文)