経営・戦略

2024.12.02 14:15

会社を見渡すことが新たな評価軸に。みんなで経営する「多能工集団」とは


2. 想像を超える成果:変革の軌跡

これらの改革は、驚くべき成果をもたらした。

社員が自ら考えて他部署に応援にいく行動が奨励される、すなわち、自分のチームから褒められるという環境は、社員の自律性・主体性を育むことに大きく寄与したのだ。

例えば、体調を崩した社員向けの休憩室を作りたいという声が自主的にあがり、賛同したメンバーでDIYを駆使して休憩室ができたり、来客者に対するおもてなしのためにカフェさながらのドリンクメニューを用意したり、事務所横の空きスペースを用いて社内菜園を初めて、社員みんなで野菜を育てたり、これら全てが社員が、より良い会社、より良い組織であり続けたいという主体的な思いから生まれたのだから、驚きである。

こういった自主的な社員が活躍する風土は顧客満足度の向上のみならず、結果として、新卒社員の離職率の劇的な改善にも成功。入社3年以内の離職率は0%となったのだ。

もちろんこれらの行動は業績面でも大きな成果を残している。これまでの既存の受注の範囲内においても、労働生産性が2倍に躍進し、売上高は20%増、利益は30%増と、飛躍的な成長を遂げることに成功した。同社は、単なる製造業ではなく、「働くを楽しむ」組織へと進化したのだ。


3. 多能工集団の挑戦:未来への羅針盤

同社は今後もさらなる成長を目指している。その鍵となるのが、全体最適を追求する「多能工集団」の育成であり、高橋さんも「社員一人ひとりが自分の役割を理解し、会社全体のために貢献できる人材になることが重要だ」と語る。

全体最適を追求する「多能工集団」になるためには、スキル・技術を多面的に学ぶことだけが大事なのではない。何よりも、自分の部署のことだけではなく、会社として物事を捉える「視座の高さ」、自分のチームや横の部署の社員まで目配せができるような「視野の広さ」、そして、目配せをするだけでなく実際に助け合うことができる「行動力」が重要だ。

同社の挑戦は、日本の多くの企業にとって大きな示唆を与えるものとなるだろう。変化を恐れず、社員の自律性を主体とした改革、すなわち人的資本経営を進めることで、企業は持続的な成長を遂げることができるのだ。
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