細田氏は「今回は、ケーブルの破断が公海(国際海域)で発生しました。国連海洋法条約は、公海における海底ケーブルの管轄権に関して明確な定義をしていません。海底ケーブルの所有者は、国家ではなく、政府系会社を含めて民間会社であることが多いことや、現行犯での検挙が不可能なことも、公海におけるケーブルの異常監視と管理責任の強化を難しくする要因になっています」と語る。
米国の場合、中国との関係で神経をとがらせている。CSISの報告書は「ケーブル破壊による経済攪乱」に懸念を示し、「南シナ海での中国の軍事活動は、同海域を通る海底ケーブルへの脅威でもある」とした。米国は、ケーブル関連施設が中国の主権の及ぶ場所に置かれることに懸念を持ち、20年6月、米国と香港を直接結ぶ海底ケーブル計画に対し、安全保障上の懸念を示して反対した。21年には、世界銀行が主導し、太平洋島嶼国のミクロネシア連邦、ナウル、キリバスを結ぶ海底ケーブル事業に中国企業が参入することを阻止した。
日本から沖縄を経由し、台湾や東南アジアなどに延びるケーブルもある。防衛省関係者は「台湾有事の際、沖縄周辺のケーブルが切断されれば、医療や交通、通信に重大な影響が出かねない」と語る。細田氏は「中国やロシアによる国際法の隙を突いた自作自演の『混乱』が今後、さらに増加することが予測されます。欧州諸国およびインド太平洋の国々には、これらのハイブリッドの挑戦に、共同して対処する叡智や政治的意思が求められています」と語った。
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