コーヒーの「2050年問題」だ。気候変動により、コーヒーが今までのように飲めなくなる日がくるかもしれない。
そんななか、生産地と協業しながらこの問題に立ち向かう日本人がいる。適切な価格で、気軽に手に入るコーヒーの裏側には、多くの人の努力がある。コーヒーを巡る課題の背景と、その解決策の一例を紹介しよう。
コーヒーの2050年問題とは?
あまり知られていないが、コーヒーの原料となる豆は育てるのが非常に難しいとされる。世界で消費されるコーヒーのほとんどが、「コーヒーベルト」と呼ばれる限られた地域で栽培されている。また、その中でも、世界の流通量の6割を占めるのは「アラビカ種」と呼ばれる品種だ。現在、「アラビカ種」の生産が大きな危機に直面している。国際的な研究機関「ワールド・コーヒー・リサーチ」などによると、気候変動などによって「アラビカ種の栽培に適した土地が、このままでは2050年には半減する可能性が高い」と警鐘が鳴らされている。
さらには、2050年までにこれまでの生産活動が存続できなくなる可能性を示しており、これが「コーヒーの2050年問題」と呼ばれるきっかけとなった。
いつまでおいしいコーヒーを飲むことができるのか
コーヒーの三大原種と呼ばれるのが、アラビカ種とロブスタ種、リベリカ種の3つ。そのうちのリベリカ種は、栽培地域が少なく、コーヒー豆の全体の流通量の1パーセント以下のため、実際に私たちが口にするコーヒーは、アラビカ種とロブスタ種の2種だ。
特に、アラビカ種が、高品質で、風味や香りに優れていて、私たちが、いわゆるブラックで飲んで、おいしいと感じるようなものだ。一方で、病害虫に弱かったり、育てるのが難しかったり。一方、ロブスタ種は、アラビカ種に次いで多く生産されており、苦みが強くそのままでは飲めないため、通常はミルクや砂糖などを混ぜて飲む。また、インスタントコーヒーや缶コーヒーなどの原料に多く使用されている。
「ワールド・コーヒー・リサーチ」の報告書によると、2050年にはアラビカ種が75%、ロブスタ種が63%減少するというデータもある。
「コーヒー2050年問題」の背景にある課題
「コーヒー2050年問題」の背景として、主に「地球温暖化等による生産環境の変化」、そしてそれによる「コーヒーの世界的な品質の低下」。さらに「ハイブリット品種への植え替え」が考えられている。「コーヒーの世界的な品質低下」は、気温の上昇と降水パターンの変動による悪化や、病害虫の増加によって引き起こされる。また、生産者の不安定な収入や劣悪な労働環境も早急な改善が求められている。
コーヒーの消費量が年々高まる一方、生産量の減少が懸念され、「需要と供給のバランスの崩れ」が起きてしまう。労働力不足と賃金上昇が生産コストの上昇を招き、供給不足による価格変動が市場を不安定なものにする。
以下の図が、過去25年間のコーヒー豆価格の推移だ。コーヒー豆の価格というのは年々上がっている状況にある。
「2050年問題」は、単純にコーヒー豆の生産量を増やすといった単純な方法で解決されるものではない。気候変動のみならず、社会的、経済的な影響を大きく受けた、一筋縄では行かない問題である。