シスコの顧客はパンデミック後に積み上げた在庫の消化に集中したため、同社の製品販売は減速した。さらに、クラウドサービスのプロバイダーや通信事業者などの大企業は、景気の先行き不透明感からネットワーク関連の設備投資を控えている。加えて、シスコは小規模なネットワーク企業との競争にも直面しており、これも同社の成長に影響を与えた。
直近の決算動向
しかし、2022年9月の安値37.50ドルと比べると、シスコの株価は約29%上昇している。直近の2024年第4四半期決算では、収益は前年同期比約10%減の136億ドル(約2兆円)、調整後のEPS(1株当たりの純利益)は同24%減と減少したものの、両数値とも市場予想を上回る結果となった。さらに、受注高は前年同期比14%増え、Splunk(スプランク)の買収による影響を除いても6%の増加だったことを示した。これは、シスコにとって良いニュースだと言えよう。シスコの年間収益は、2020年の約493億ドル(約7兆2141億円)から2023年の約570億ドル(約8兆3410億円)へと増加したが、これは主にネットワーク関連製品とセキュリティ関連製品の売上が増加したためである。年間EPSも2020年の2.65ドルから2023年の3.07ドルへと増加している。しかし、2024年の決算では、収益の減少や競争の激化などによりEPSは約2.54ドルに減少した
インフレショック前の高値回復なるか?
シスコの株価は2021年1月初旬につけた40ドル台から、現在50ドル前後の水準まで、約25%の力強い上昇を見せている。過去3年間のリターンは2021年に46%、2022年にマイナス22%、2023年に9%となっている。これに対し、S&P500種株価指数のリターンは、2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、シスコのリターンは2022年と2023年にS&P500を下回っている。シスコの株価がインフレショック前の高値まで回復するためには、およそ21%の上昇が必要になる。株価がその水準まで回復する可能性はあるものの、私たちはシスコの目標株価を55ドル程度としており、これは現在の価格より約13%高い水準だ。世界経済への懸念や企業のIT投資に対する慎重な姿勢が強まるなか、短期的には上昇幅が限定される可能性があると私たちは考えている。
一方で、シスコがリカーリング収益モデルを推進し、買収を通じてサイバーセキュリティへの注力を強めていることは、株価を押し上げる要因となりうるだろう。また、現在米国の連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率の暴走を抑えようと努力している最中であり、そのことが市場全体を後押ししている。潜在的な景気後退の懸念が和らげば、シスコの株価も上昇する可能性を秘めているだろう。
(forbes.com原文)