国内

2024.08.13 08:00

清原達郎に学ぶ「わが投資術」と「危機への対処」

清原達郎

このとき、私には必ずこの危機は乗り越えられるという勝算がありました。直観とも理屈とも言えないものなのですが、根拠はありました。突発性の不況というものは、必ずといっていいほどV字回復を見せる。特に製造業は一時的には、危機前を超えるほどの勢いになるからです。製造業は下層レイヤーも手厚く、引きずられて強烈な上昇相場が始まることは明確でした。ファンドが一息つけたあとは、底練り状態にあった株を買い集め、私はギリギリのところで助かり、その後大きなリターンも得ることができました。

社員を大切にできない会社など論外

「この先10年の日本経済」について語れることがあるとすれば、身も蓋もない暗い話です。人口減少に高齢化の社会では内需に軸足を置いた成長は理論上ありません。実質GDP成長率は良くてゼロ。上場企業の成長率も最大2%くらいでしょう。
 
ただし、リーマンショック時の体験談で述べたように、日本は製造業がしっかりしている。日本人はやはりモノづくりが得意な国民です。製造業がしっかりしていると、投資環境としては安心感が出てきます。需要縮小は避けられませんが、それに併せて業界内では吸収合併や経営統合が進むため、残った企業は安定的な利益を生み出せます。加えて日本人のモラルの高さ、誠実さは世界でも群を抜いています。これからは特に小さな企業では人材確保がカギになりますが、私はその企業ホームページにどれだけ従業員の写真が掲載されているか注目しています。社員を大事にできない会社など、これからは論外です。
 
このインタビューはメールでのやりとりをベースにしたものです。6年前、私は咽頭がんの手術で声を失ったのです。最近強く思うことは、人間にはなんでも良いから他人の役に立っている実感が必要だ、ということです。その点、私は幸福でした。多くの顧客から大切な資産をお預かりし、投資家として人様の役に立ったと自負できるからです。理屈でも直観でもない、ただの感想なのですが。
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清原達郎◎1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。98年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2023年、同ファンドの運用を終了し、退社。

取材=谷本有香 文=出野宏一 写真=野口 博

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