2012年8月以来、キュリオシティは火星の赤道地域にある大型の盆地のゲールクレーターを調査している。数十億年前にこの衝突クレーターに浅い湖があったことを、古代の砂紋と硫酸塩を含有する地質体(類似の岩質で構成される地質学的構造)が示している。この地質体は、水の蒸発に伴って沈殿した硫黄系鉱物(硫黄と他の元素の組み合わせ)を豊富に含む堆積岩層だ。
科学チームはその後、キュリオシティのアームに搭載されている分析機器を用いて、黄色の結晶が元素硫黄であることを突き止めた。このような硫黄の結晶が火星で発見されたのは、これが初めてだ。
この晶洞石の硫黄が、同じ地域にある他の硫黄系鉱物とどのような関係があるかについては、明らかになっていない。地球では、元素硫黄は限られた条件下でしか形成されない。硫黄結晶は、硫化水素の酸化により、高温のガスや水蒸気が放出される火山性噴気孔の縁に沿って形成される可能性がある。だが、これまでのところキュリオシティの調査では、この場所で過去や最近の火山活動の痕跡は見つかっていない。また、元素硫黄は一部の鉱脈鉱床で、古い硫化鉱物の化学的変性の生成物としても見られる。堆積岩に含まれる純粋な硫黄は、硫酸塩(硫黄と酸素を含む鉱物)の微生物活動による還元によって生成される可能性があり、火星の生命探査にとっては十分に興味深い。
また、火星の岩石には、これまで考えられていたよりも多くの元素硫黄が含まれていると、科学チームは考えている。キュリオシティが偶然踏み割ったのに似た、白色の岩石が全域に分布する地帯が見つかっているのだ。
キュリオシティのプロジェクトサイエンティストで、NASAのジェット推進研究所(JPL)のアシュウィン・バサバダは「純粋な硫黄でできた岩石が広がる地帯を発見するのは、砂漠でオアシスを見つけるようなものだ」と説明している。「そこにはないはずのものだから、これからその説明をしなくてはならない。不思議で予想外のものが見つかるからこそ、惑星探査は非常に心が躍るのだ」
追加資料とインタビューはNASAから提供された。
(forbes.com 原文)