小動物の餌としてペットショップなどで売られているミルワームが成長すると、ゴミムシダマシという甲虫になる。なかでも大型のジャイアントミルワームの成虫ツヤケシオオゴミムシダマシには、雄同士が互いの脚に噛みつくという珍しい戦いを展開する習性がある。なぜそんな戦い方をするのかは不明だった。そこで岡山大学大学院環境生命自然科学研究科博士後期課程2年の松浦輝尚氏と、同学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の宮竹貴久教授は、36組の雄のツヤケシオオゴミムシダマシを戦わせて調査を行った。
体のサイズが同じペアは、戦いの時間が、サイズが違うペアにくらべて長かった。デカイやつには簡単に負けて早めに勝負がつくのだが、同じ体格同士だと戦いが長く激しくなる傾向にあるということだ。そのため、同じサイズのペアで負けた雄は、脚の怪我のために踏ん張りがきかなくなり、うまく交尾ができないことがわかった。結果として、その雄と交尾した雌の産卵数が極端に少ない。
これは世界で初めての発見だ。脚にダメージを与えることで、そいつの子孫を残せないようにするという、ちょいと陰湿なやり方だが作戦は大成功だ。写真を見ると、たしかに雌の上に乗った雄の体勢が危なっかしい。
交尾器の挿入時間は、激しく戦って負けた雄も、ほかの雄にくらべてやや短い程度なのだが、顕著なのは、その相手となった雌の産卵数の減り方だ。
しかしよく見れば、長く激しい戦いを繰り広げたペアは、負けたほうも勝ったほうも、交尾した雌の産卵数が大幅に減少している。つまり、ケンカは勝っても負けても不毛だということ。それをツヤケシオオゴミムシダマシさんたちは身を挺して教えてくれているのだ。平和共存がいちばん。
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