気候・環境

2024.07.07 10:00

猛暑対策、都市全域での「クールルーフ」導入で外気温1.2度低下 英研究

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厳しい夏の暑さから都市の住民を丸ごと守るには、都市全域規模で建物の屋根を白く塗るか高反射率塗装を施すのが最も効果的だとする新しい研究結果が、科学誌Geophysical Research Lettersに掲載された。この方法により、英国のグレーターロンドン(大ロンドン)を対象としたモデル化研究では、都市全体の外気温が1.2度下がったという。一方、都市全域規模で屋根にソーラーパネルを設置した場合、外気温は0.5度下がった。

論文の筆頭著者でロンドン大学バートレット校のオスカー・ブルース博士は、大学のプレスリリースで次のように述べている。「ロンドンのような都市が温暖化に適応し、その影響を緩和するために利用可能な複数の対策を包括的に実験したところ、夏の猛暑日に気温を下げる最良の方法は、(屋根を白色や高反射率の塗装で覆う)“クールルーフ”であることを発見した。他の対策にも重要かつさまざまな副次的メリットがあったが、都市部における屋外の暑さをほぼ同レベルまで軽減できるものはなかった」

ほとんどの都市はコンクリートジャングルと化しており、アスファルト舗装やコンクリート建築など、熱を吸収・保持する物質で地表面のほとんどが覆われている。その結果、毎年夏になると都市部の気温が郊外に比べて高くなるヒートアイランド現象が発生し、都市で暮らす人々は熱中症や熱射病のリスクにさらされる。暑い中に長時間いると、心血管関連死や慢性腎臓病、呼吸窮迫症候群のリスクも上がる。

論文は「パッシブクーリング戦略として一般的に提案される方法には、都市部の緑化、植物を植えこんだ屋根(屋上緑化)、さまざまな屋根材(コンクリートや金属、断熱材)を用いた高反射率の屋根(クールルーフ)などがある」と説明。「屋根を変えることによって屋内の気温を下げ、建物の冷房需要を減らせる。都市規模で導入すれば、外気温も下がり、暑さ関連死の減少につながる」と述べている。パッシブクーリングとは、冷房機器に依存せず、自然現象を活用して温度を下げる技術や仕組みのことだ。

この研究では、クールルーフと比較した場合、屋上緑化には都市全体の気温を下げる効果はあまりないと報告している。

論文はまた、「屋上太陽光発電(PV)パネルは主に電力源とみなされているが、屋根の日射反射率(アルベド)を増加させ、入射する太陽光を電力に変換してエアコンの動力に利用することで、屋内外の気温に影響を及ぼす。したがってパッシブアクティブ戦略と考えることもできる」と評価。「どのような介入策であれ、都市規模での影響は、適用する面積や建物が減少するほど小さくなる。クールルーフについては、ロンドンの低層住宅地に適用するとより大きな効果が得られるが、市中心部の中層建築への適用を今後さらに進めた場合にも、周辺住宅地の気温を下げる効果があることがわかった」としている。

英イングランドでは2023年、夏の熱波による死者が2295人に上った。熱波は、世界でも非常に多くの犠牲者を出している異常気象の1つだ。気候科学者によれば、2023年の夏は人類史上最も暑かった。複数の研究結果が、熱波と大気汚染レベルの上昇との関連性を指摘している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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