睡眠不足が旅行に及ぼすマイナスの影響を軽減するためには、どのような対策を講じるのが効果的なのだろうか。
旅行中の不眠の原因は?
理由は複数あるが、大きな要因の1つは「第一夜効果」と呼ばれるものだ。私たちに生来備わっている生存メカニズムにより、普段と異なる環境で眠ろうとするときには脳の一部が覚醒したままになり、十分な睡眠が取れなくなる。こうした「警戒心が高まった状態」は進化の過程において、未知の環境に潜む潜在的な危険から私たちを守ってきた。また、旅行による身体的・精神的ストレスも原因になる。飛行機でも車でも、長時間座っていたことで体がこわばったり、機内の乾燥した空気によって体内の水分量が不足したりすることが体の不調につながり、眠れない原因になりうる。
さらに、初めて訪れる場所での移動やスケジュールの管理、旅行中に起こることへの期待や不安などがストレスとなり、リラックスできない、眠れない、ということにつながる場合もある。タイム・ゾーンが異なる地域への旅行は時差ぼけを起こし、体内時計が狂うことから、こうした問題はさらに大きくなる。
こうした要因を理解しておくことは、旅行中に起こりうる睡眠の問題により良く対応することを助けてくれるだろう。
スリープツーリズムの人気
睡眠の重要性に対する認識が高まったことで、注目されるようになったのがスリープツーリズムだ。睡眠に着目したアメニティを提供する宿泊施設が増加している。ロビンズ博士は、「ホテル側が、単に眠るための部屋を提供しているのではなく、より良い睡眠を提供しているのだということに気づき始めたのです」と説明する。
より良い睡眠のためのリトリート(リラックスすることに重点を置いた旅行スタイル)なども登場しており、リラックスするために最適な静かな環境を整え、睡眠科学について学ぶ機会やより良い睡眠のためのツールを提供している。
より良い睡眠はホテルの利益にも
ロビンズ博士は、「旅行者のうち、滞在中の睡眠に満足したとする人は3割にとどまっています。改善の余地は非常に大きいということです」と指摘する。ホテルにとって、宿泊客の睡眠の質を高めることは、快適さを提供するというだけのことではない。ビジネスとしても賢明なアイデアだ。より良い睡眠経験を提供するための投資は、リピート率の上昇や利用者が他者に「お勧めする」可能性を高めることにつながり、利益に大きく影響を及ぼすことになりうる。
旅行中の快眠のためのヒント
1)「いつもどおり」を心がける:就寝時刻であることを脳に認識させるため、なるべく普段と同じように行動する2)出発前から調整する:時差ぼけの影響を軽減するため、旅行先のタイムゾーンに合わせて、出発前から少しずつ就寝時刻を変えるなど、調整をしておく
3)自然光を浴びる:体内時計を調整するため、到着したらなるべく自然光を浴びるようにする
4)食事は軽めに:夕食にたくさんの量を食べることで睡眠が阻害されないようにするため、昼食をしっかり取り、夕食は軽めにする
5)入眠を促す環境を整える:不慣れな環境では特に、耳栓やアイマスクを使用し、騒音や不要な光を遮断するとよい
(forbes.com 原文)