「部屋割り表」の存在
もしかしたら、よほど小さなホテル・旅館は部屋割り表を手書きで作っている所もあるかもしれません。けれども、予約ソフトに組み込まれているかオリジナルで作っているかは別として、だいたいは表をパソコンで作成していると思います。エクセルの表みたいなものを想像していただければよいです。左と上どちらかが部屋番号と日付になり、セルのひとコマがその部屋番号の一泊となります。何ヶ月先まで視覚的に分かり易くしないと、とてもコントロール出来ません。
例えば全員が一泊なら部屋割り作業はそう難しくはないと思います。しかし宿というのは必ず連泊者がおり、その泊数もバラバラです。
表を視覚的に見ると、イン・アウトが同じ日でない限り、セルの長い棒が重ならなかったり隙間が空いたりするわけです。
これが満室近くになってくると、表はさながらパズルのようになってきます。ですから、表の作成にはけっこうな経験やコツがホテルスタッフにも必要になってきます。
だから一番苦労するのは、何らかの原因でチェックイン時・後に部屋の移動が発生した場合です。満室や満室近くの場合、移動先の部屋もまた移動、その後の日程も巻き込んでまた移動に次ぐ移動と大変な事になってしまうことがあります。
なぜ自分がその部屋に決められたかは、「考え過ぎない」方がいい
前述のように宿泊者にはいろいろなことを考慮しながら部屋を決めているものの、全てのお客様に配慮できるはずもなく、満室近くであればなおさら無理な場合もあります。人は常に理由を求めたがるものですが、そもそも理由などない場合もありますのであまり神経質になる必要はありません。
よく宿泊客が心配される内容に次のようなものがあります。
・〇〇サイトから予約したから、ポイントを大量に使用したから、こんな部屋、位置、階にされたんじゃないだろうか?
・希望・要望したのに叶えてもらえなかったということは、自分はホテルに好かれていないのではないか?
どこから予約が経由されたかというのは関係なく、お客様は同じお客様です。少なくとも私や私の勤めていたホテルではそういったことは関係ありませんでした。ポイントも現金と同様の価値があるものですし、きちんとポイント分も収益としてホテルに入るのでそういった心配は不要です。
繰り返しになりますが、要望はあくまでも要望です。絶対に叶えられるものではありませんから、ホテルに望まれていない客だなんて悲観しないで下さい。
最後に補足で……、逆に希望もしていないのにチェックイン時に
「グレードアップさせていただきました」
などと、予約したプラン料金より高い部屋にしてもらえた経験はありませんか?
「おお、俺はホテルにとって歓迎な良客なのか?」
と思ってしまいがちですが、これ、高い部屋が売れ残って安い部屋に予約が集中したとか、安いプランでオーバーブッキングしてしまったので振り替えたとかの可能性があります。
残念ながらホテルがよく使う言い回しなのです。
■「ホテル裏話 | なぜ? みんなの疑問を元ホテルマンが暴露」◎元ホテル勤務の筆者がホテル経営の裏側を綴るブログ。ホテルにまつわるあらゆる雑学やエピソード、宿泊者が不思議に思うホテルの「なぜ?」にも答える。
(※本記事は筆者個人の勤務経験・体験にもとづくものであり、すべてのホテルに関する知見を網羅するものではない)