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2024.05.22 15:30

世界が注目する独自の「システム図」スタートアップ投資の「物差し」を変える

梅田和宏(写真中央)三浦麗理(同右)工藤七子(同左)|SIIFインパクトキャピタル

梅田和宏(写真中央)三浦麗理(同右)工藤七子(同左)|SIIFインパクトキャピタル

日本でインパクト投資の普及に取り組む社会変革推進財団(SIIF)とファンドマネージャーの梅田和宏が新たに立ち上げたのが、SIIFインパクトキャピタル(SIIFIC)だ。同社は2023年6月、SIIFICウェルネスファンドを組成。名前の通りウェルネス領域のスタートアップを投資対象とし、同年10月には胆道がん治療薬を開発するジェイファーマへの投資を発表した。

設立の狙いを、SIIF常務理事の工藤七子は次のように話す。

「社会課題の根本的な解決、システムチェンジを実現するため、インパクト投資をさらに進化させたい。それに向けてSIIFICでは、課題のより深い構造分析、またグローバルで生まれる新しいインパクト測定・マネジメント(IMM)などの実践を目指しています」

SIIFICの代表パートナーに就任した梅田はベンチャーキャピタリストとして、三浦麗理は事業会社の経営者としてスタートアップ投資、企業経営、IPOやM&Aといったイグジットに至るまで、豊富な実績をもつ。長年の経験のなかで、両者が共通して必要だと感じていたのが、大企業や海外投資家たちからスタートアップが適切な評価を受けるための“物差し”だった。「投資先のヘルスケア企業が上場する際に、事業内容を海外の機関投資家から理解してもらえず、うまく企業価値を形成できなかった経験から、グローバルに通用する指標を使った説明が必要だと痛感しました」(梅田)

梅田、三浦はそれぞれの課題意識からインパクト投資と出合い、SIIFIC設立に共同創業者として参画した。「バランスのいい男女構成のチームはファンドリターンが向上するという学術的な研究結果もすでにあり、その点でもこのタッグはいい結果を生めるのではないか」と三浦は説明する。

特徴的なのが、投資検討時の調査で実施する、対象企業の事業内容をもとに作成した「システム図」による分析だ。世の中にある社会課題の構造のどこを突くことで企業の取り組みが課題解決につながるのか、要素を因果関係で結び、図示して可視化する。このような分析は珍しく、国際カンファレンスのパネル登壇や海外のVC業界団体からプレゼンの依頼が来るなど、国外からの反響が大きいという。

将来は、ウェルネス領域の社会課題をシステム図に落とし込み、それを起点に投資先のスタートアップを選定、もしくはゼロから企業を創出し、ポートフォリオのなかでシナジーを生みながら課題を解決していく構想を描く。工藤が意気込む。

「世界的にもまだめずらしい投資手法。ファンドの償還期限があるなかでどこまでできるかわかりませんが、みんなで試行錯誤しながらやっていきます」


梅田和宏◎SIIFインパクトキャピタル代表パートナー。産業革新機構、エムスリーを経て2022年より現職。

三浦麗理◎SIIFインパクトキャピタル代表パートナー。ソフトバンク、トライトなどを経て2022年より現職。

工藤七子◎2017年4月に一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)を設立し、常務理事に就任。

文=加藤智朗 写真=平岩 享

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