中部大学の研究チームは、空間識失調のなかでも、並進運動(平行移動)で加速したときに、加速度を重力と勘違いして、上に傾いているように錯覚する「体重力錯覚」について、金魚を使って実験を行った。
体重力錯覚は、人の耳の中にある重力センサー「耳石器」が加速度と重力を区別できなくなるために起きるが、空間識失調の発症メカニズムや防止方法はわかっていない。そこで研究チームは、同じ条件を金魚に与える装置を開発し、空間識失調を発症するかどうかを調べた。人も金魚も、頭が傾いたとき、見ている映像がブレないように反射的に目が動いて視野を安定させる。これを「前庭動視反射」というが、実験では、金魚の目がそれによって誤った方向を向く、つまり空間識失調を起こしていることが確認できた。
そこで、視覚と並進運動を協調させる訓練を3時間行ったところ、金魚の空間識失調が解消された。このときの空間識失調と解消の過程を、研究チームは数学的に説明できる数理モデルを構築した。また脳内での空間識形成過程の計算理論の提案も行った。つまり、これを応用すれば、乗り物酔い克服アプリなんて作れるかもしれない。
もちろん、航空機事故を減らすことのほうがが重要だ。パイロットの訓練用に、この数理モデルを使ったシステムが開発されることを期待したい。逆に、体重力錯覚を利用したシミュレーターに乗ってもぜんぜん楽しくなくなるという「副作用」はあるだろうが、事故を起こすよりはいい。
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