「ローコンテキスト文化」では、行間が狭まる
日本では「空気を読む」ことがコミュニケーションを取る上で大切になる。これを学術的にいうと「ハイコンテキスト文化」と言ったりするが、日本では発話者が発信している内容の行間を読む事が大切となる。
一方で発された言葉を文字通り理解しようとする文化を「ローコンテキスト文化」といい、発話者は誰が聞いても分かるように説明を展開するスキルが求められる。従って行間は狭まり、誰が聞いても同じ様な理解ができるような会話のキャッチボールとなる。
この行間の扱い方の違いはコミュニケーションの作法にも違いとなって表れる。少し学術的な説明になるが、英語は「主張」を先に述べ「本論」を続ける傾向が強くなる。単純に分かりやすいからだ。一方で日本語は「本論」から始め、「主張」は後に続くか、または読み手が「主張」を読み取ったと分かれば割愛される傾向が出てくる。
それでは、この行間と作法の違いから実際に以下、アイアトン氏と水原氏の通訳を比べてみる。そしてこれらの違いがどのようにインタビュアーと大谷選手の対話に違いをもたらすのかを見ていこう。
まずはアイアトン氏訳を分析
まずはアイアトン氏の通訳から見ていく。彼の流儀は「直訳スタイル」あるいは「憑依スタイル」と言われる。左から右へと順番通り、また単語もそのまま忠実に訳すスタイルであるからだ。従って日本のコミュニケーション作法のまま、「本論」から「主張」へと順番通りに英語に通訳される。
実際にこのスタイルがよく分かる通訳例があるので見てみよう。主観を入れないように、アイアトン氏が通訳した大谷選手のコメントはChatGPTで和訳している(なお記事末に、同じ内容を表形式でも掲載した)。
(大谷選手の実際のコメント)
1.監督とも今日、ウィルさん含めて、話して、本当に自分らしくまずいればそれだけでいいっていう風に言ってもらえてたので、それでも気持ちが楽になりましたし、今日こうやってまず結果がでて、
2.それをまず継続して頑張りたいなと思っています。
(アイアトン氏の通訳:ChatGPTによる和訳)
1.実際、今朝、私は監督と話をしました。彼はただ自分らしくいることを勧めてくれて、あまり無理をしないようにと言ってくれたので、それは本当に私を助けてくれました。自分自身を落ち着かせて、自分らしくいることができたので、本当に嬉しいです。そして、
2.これからもそれ(自分らしくいること)を続けられるといいなと思います。