バイオ

2024.03.19

甲虫のオスは高齢ほどしつこい

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穀物の害虫として知られる体長5ミリほどの甲虫、オオツノコクヌストモドキは、大きく発達した顎を使ってオス同士がメスを巡って激しく戦う。だがその戦い方が、若いオスと歳を取ったオスとでは異なり、年寄りのほうがしつこく戦い続けることが岡山大学の研究でわかった。

岡山大学は、イギリスのエクセター大学と共同で、オオツノコクヌストモドキのオスが羽化後の日齢によってメスを巡るオス同士の戦い方が変わることを世界で初めて明らかにした。オス同士が交尾相手を求めて競い合うことは、昆虫も哺乳類も同じ。だが、年齢によってその戦い方が変わることは、これまでほとんど研究されてこなかった。それというのも、日齢、体の大きさ、遺伝的背景が揃ったオスを大量に集めるのが難しかったからだ。

岡山大学は、そうしたオオツノコクヌストモドキのオスを10年近くかけて育て、215対を準備した。そのうち、羽化してから10日の「若いオス」87対、50日の「加齢したオス」128対を使い、両者が出会ってから戦いが始まるまでの時間と、決着が付くまでの時間を計測した。

すると、若いオスと加齢したオスとでは戦いが始まるまでの時間に変化はなかったものの、加齢したオスは戦いが長くなることがわかった。若いオスは体力もあり、その後も繁殖のチャンスがあるのに対して、加齢したオスは先がないため、目の前の戦いに固執するのだという。なんだか切ない話だ。

生物は「なぜ戦うのか」、「どのように戦うのか」という問いに「将来への投資余剰という視点」から示唆を与えると、研究チームは話している。どれだけの体力を投資できるかによって、戦術が変化するということだ。

ところで岡山大学は、2016年に同じオオツノコクヌストモドキの研究で、メスは顎が発達して戦いに強いオスよりも、求愛行動が上手なオスを好むことを発表している。しつこく戦いを止めない人間の年寄りに聞かせてやりたい話だ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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