娘のようなベラを手元に置いておきたいゴッドウィンは、マックスに彼女との結婚を勧め、法的手続きを弁護士のダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)に依頼する。しかし、ひと目でベラを気に入った放蕩者のダンカンは、自分と一緒に旅に出ようとベラを誘惑する。
「世界を自分の目で見たい」というベラの要望に抗しきれず、ゴッドウィンは渋々ベラを送り出す。
左から、ベラ役を演じるエマ・ストーン、ダンカン・ウェダバーン役を演じるマーク・ラファロ(c)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
この後、ベラとダンカンは船に乗り、リスボンやエジプトのアレクサンドリアを訪れるが、そこで彼女は新たな世界に触れて、日々成長を重ねていく。それとともに何の制約を受けることなく、女性として性的にも発展を遂げていくのだった。
残念ながら、日本では公開に際してその過激な性的表現によりR-18指定となってしまったが、それほどヨルゴス・ランティモス監督が展開する映像は衝撃的だ。原作小説とは異なり、ベラを主人公として描かれる物語は、どこに辿り着くのか観ていてとてもスリリングだ。
ゼロの状態から出発したがゆえにあらゆる軛(くびき)から解き放たれて、自らの意志で運命を切り拓いていく主人公の行動には、胸のすく思いがする。時代設定は曖昧にされており、それゆえに映像巧者のランティモス監督は、この破天荒な冒険物語を、さまざまな表現を駆使して自由闊達な作品に結実させている。
(c)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
「ラ・ラ・ランド」のイメージを一新
アカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされているエマ・ストーンの身体を張った大胆な演技も「哀れなるものたち」の見どころの1つだ。エマは、最近では全米の長寿番組「サタデー・ナイト・ライブ」で放送された「Naked in New York City」というミュージカルに登場し、全裸で歌いながらゴミ収集車に乗る姿を披露している。
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デミアン・チャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」(2016年)では愛らしいヒロインを演じて、アカデミー主演女優賞に輝いたエマなので、そのイメージを一新する役だったが、視聴者からの評価は高く、女優としての幅の広さを印象付けたようだ。