そんななかで、ふるさと納税を通じた災害支援、そして、「被災自治体の負担を減らす」試みが行われている。日本の寄付の特徴と共に、新たな選択肢について紹介する。
寄付者率「68.6%」災害時に増える日本人の寄付行動
世界118位でありワースト2位。
これは日本の「世界人助け指数」の順位である。2022年に発表されたこのランキングは、イギリスに本部のある慈善団体CharitiesAidFoundationによるもの。「寄付をしたか?」「ボランティア活動をしたか?」「見知らぬ人を助けたか?」という問いに回答し集計したものだ。この順位を見ていると、アメリカをはじめとした欧米諸国のように、豊かな寄付文化があるとは言いにくい状況である。
ただ、非常事態においての行動変容が、「寄付白書2021」で確認することができる。2009年の個人寄付総額は5455億円(寄付者数3766万人)。続く2010年は4874億円(同3733万人)。
しかし、東日本大震災のあった2011年は1兆182億円(同7026万人)、そして、コロナが広まった2020年では1兆2,126億円(同4352万人)と、災害時に寄付が増えていることがわかる。2011年はインフラが崩壊し、ボランティアも入れない状況にあり、「自分にできること」の一つとして寄付が選択されたと想像できる。2010年の寄付者率は68.6%にもなった。
災害時には義援金が定番でもある。被災者に届けるものであり、赤十字や赤い羽共同募金などが受付、100%が公平に配られる。ただ注意が必要なのは、義援金は被災地での救命・復旧活動に使用されることはない。また、被災者の正確な人数の把握に非常に時間がかかり、配布作業も混乱した被災自治体が行う必要もある。いかに現地に負担なく支援するかがも重要なポイントとなるだろう。「現地の助けになりたい」という寄付者の“想い”との乖離があっては本末転倒だ。
「被災自治体の苦労」を知る他自治体職員
いま、代理寄付の仕組みを立ち上げたふるさと納税ポータルサイトがある。ふるさとチョイスだ。2023年末に批判が目立ちがちなふるさと納税において、問題提議する広告が記憶に新しい。
と表現された広告の背景には、返礼品競争の激化から、一部自治体に寄付が集まり、「生まれた故郷や、応援したい自治体への寄付」という本来の目的からズレている現状があったからだ。
「ふるさと納税をあるべき姿に」と啓蒙するふるさとチョイスの「代理寄付」は、被災自治体の負担軽減を目的としている。代理自治体が被災した自治体の代わりに寄付金受領証明書の発行等の膨大な事務作業等を引き受け、寄付を受け付けるもの。これにより、被災自治体は、優先度の高い災害対策に注力しながら、災害への関心が高い被災直後から寄付を募ることができる。なお、自治体から寄付受付のためのサイト利用手数料について、ふるさとチョイスは受け取っていない。
災害対策基本法が定める地方公共団体との「責務」とは?
災害時において自治体では何が大変なのであろう。実は、「災害対策基本法」において、市町村(自治体)は、基礎的な地方公共団体として防災に関する対策を実施する責務を有し、災害応急対策及び応急措置を実施する義務を負っているのだ。災害時において、インフラ(道路・河川)の復旧は、自治体にとって日常業務と近しい部分があるので、比較的対応しやすいだろう。一方で、「避難所のトイレが使えない」「コロナなどによる被害関連死がある」「立場の弱い人の性被害の可能性がある」など、自治体にとっても非日常な問題が次々と勃発する。不慣れな対応である上に、どれも難しい問題ばかりである。
目の前の対応に奮闘する自治体の負担を軽減しながらも、寄付を届ける仕組みとして「代理寄付」がある。ふるさとチョイスを運用するトラストバンク社によると、既に全国87自治体が「゙代理寄付」を採用(1月16日時点)。どのような背景で「代理寄付」を導入したのだろうか。石川県穴水町へ「代理寄付」をしている岐阜県八百津町の事例をふるさとチョイスが紹介している。
ふるさとチョイスのHPには以下のようにある。
ふるさと納税担当職員同士の繋がりにより実現したという。「被災地の対応がどれほど大変なものか」を知っているのが自治体職員。「何か被災地を支援できることがないか」といった“想い”から利用されるケースが多いようだ。過去被災した際に代理で寄付を受け付けてくれた自治体への恩返し、交流のある自治体への支援といったケースもある。
ふるさとチョイスでは、被災自治体への直接寄付も同時に受付中。ふるさと納税を通じて寄付を募ることで、被災自治体に速やかに且つダイレクトに寄付金が届けられる(原則、お礼の品はなし)。災害対応や復旧復興、防災などのために活用されるようだ。こちらも3億円近くもの寄付が集まっている(1月16日13時30分時点)。
日本の寄付文化はまだ成長段階であることは間違いない。しかし、「急激な成長よりも確実な成長を」、そう考えた時に、今回のように「受け取る側が無理をしない仕組みづくり」にも、視野を広げる必要がある。