旅客機のジェットエンジンには発電機が取り付けられ、機内の電力を賄っている。現在は、エンジン外部に設置された発電機にエンジンの回転を伝えて発電するシステムが主流だが、飛行機が大型化すると発電機も大きくなり、空気抵抗が増すなどの弊害が出る。そこで、国産ジェットエンジン開発のリーディング企業であるIHIは、エンジン内部に大出力発電機(電動機)を組み込む技術を開発した。電動機は、ジェットエンジンの後部でジェット噴射の流れを整えるための円錐形の部品「テールコーン」の内部に組み込まれる。
IHIは飛行機の電動化技術の研究開発を行っているが、それは電動推進ばかりではない。現在は姿勢制御のための動翼の駆動に使われている複雑な油圧装置を電動化して、構造をシンプルに軽量にする技術も含まれる。今回IHIが開発した電動機は、出力が1メガワットと強力なもので、電動化された各システムの電力を賄えるほか、将来的にはこれをモーターとして使いファンを回転させて電動飛行をさせるハイブリッド電動推進の計画もある。ハイブリッド電動推進は世界中で研究されているが、それの実現に必要な電動機の出力の目標が1メガワットなのだ。つまり、すでに駆動系統は技術的にほぼクリアされ、あとは電池などの周辺の要素を整えればよいということだ。
テールコーンは、運用性や整備性にもっとも優れた電動機の搭載位置だという。しかしジェットエンジンの噴射によって大変な高熱になる部分でもある。IHIは、これまでに積み重ねてきた摂氏300度に耐える高密度成形コイル技術や排熱システムなどを総合して、この大出力電動機を実現させた。今後は、IHI独自の燃料電池技術などと組み合わせて、航空機システム全体の電動化と最適化に取り組むとしている。
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