「台湾の民主主義に新たなページを刻んでくれた台湾の人々に感謝したい。台湾は、これからも世界中の民主主義国家と肩を並べて歩んでいく」と頼は14日に報道陣に述べた。
頼は、中国との関係強化を主張する国民党と台湾民衆党の2党と対決し、勝利した。今回の選挙の投票率は70%を超え、1950万人以上の有権者が13日に投票したが、民進党の副総裁である頼は全体の約40%の約559万票を獲得した。
国民党の侯友宜候補は約33.5%を獲得し、民衆党の柯文済候補は約26.5%を獲得した。この2党は一時期、提携を協議したが話し合いは決裂していた。
次期総統に選出された頼は、1959年に台北の新北市の炭鉱労働者の息子として生まれ、国立台湾大学と国立成功大学で医学を学んだ後、ハーバード大学で公衆衛生学の修士号を取得した。彼は腎臓専門医として働いた後に98年に台南市から国会議員に当選し、2010に台南市長に就任していた。
頼はその後、2017年から2019年にかけて蔡英文総統の下で行政院長(首相)を務め、2020年からの2期目の蔡政権で副総統を務めた。台湾の主権的地位の断固たる擁護者としての評判を高めてきた彼は、5月に退任する蔡現総統の後を継いで総統に就任する。
ライバルの2人の候補者が中国寄りの姿勢を示す一方で、頼は、台湾が経済成長において中国に過度に依存しないよう、国際貿易を促進する経済政策を打ち出した。
今回の選挙結果は、台湾以外にも広く影響をおよぼす見通しだ。中国は、台湾を自国の領土の一部とみなし、中国との「再統一」を長年主張しており、その目的を達成するための武力行使の可能性も排除していない。このことは、米中の対立の一因ともなっている。
中国は選挙結果に不快感
中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は、13日の選挙結果を受けて、民進党は台湾の主流な民意を代表することはできず、頼の勝利が状況を変えることはないと表明した。また、選挙の数時間前に中国の国防省は、人民解放軍は独立に向けたいかなる動きも「粉砕する」と述べた。中国はこれまで度々、頼を「危険な分離主義者」と評し、台湾の有権者に「正しい選択」をするよう呼びかけていた。
台湾国民党の馬英九前総統は、選挙の直前の10日のドイツメディアの取材に、台湾は台中関係の諸問題において「習近平国家主席を信頼するしかない」と発言し、物議を醸した。馬前総統はまた、台湾が中国との戦争に勝つことはできないので、台湾は国防費を削減すべきだと発言したが、国民党から総統選に出馬した侯友宜候補は「私とは考え方が違う」と立場の違いを強調した。
今回の選挙では、中国との関係以外にも多くのことが争点となった。有権者の多くは台湾経済の今後を懸念しており、インフレや低賃金、不動産価格の上昇といった国内問題に政府が取り組むことを望んでいる。特に若い有権者は、政治家が他の問題を犠牲にして両岸の緊張関係に焦点を当てすぎることに不満を表明していた。
(forbes.com 原文)