トランプは16日、ニューハンプシャー州で開いた集会で、米国に大量の移民が流入していることに言及した上で、「彼らはわれわれの国の血を汚している」と発言。その後、自身のSNS(交流サイト)「トゥルース・ソーシャル」にも同様の内容を書き込んだ。ヒトラーは著書『わが闘争』で「過去の偉大な文明が滅びたのは、最初に生み出された人種が血を汚されて死に絶えたからだ」などと主張した。トランプはヒトラーになぞらえられる発言をここ数週間で少なくとも4回している。
ジョー・バイデン米大統領の陣営や歴史家は、トランプの言葉遣いとナチのプロパガンダ(宣伝)の類似性を繰り返し指摘してきた。
『新しい権威主義の時代』という著作でも知られる米ニューヨーク大学のルース・ベンギアット教授(歴史学)は、「ナチは自分たちの『支配民族』や文明の血が汚されることへの恐怖を国家の基盤にした」と述べ、トランプの言葉は「ファシスト」のものだと警鐘を鳴らす。イタリアのファシストたちが「非白人の移民によって白人のキリスト教文明が破滅させられる脅威」について語っていたことも引き合いに出している。
だが、共和党の政治家にはトランプの発言を擁護したり、それについて沈黙したりする者が多い。
ニューヨーク州選出の共和党のニコール・マリオタキス下院議員は18日、CNNテレビの番組で、トランプは「移民という言葉は使っていない」「民主党の政策について語っていたのだと思う」などとかばった。「彼は実際には移民と結婚しているし、移民を雇ってもいる」とも述べた。
米政治サイトのポリティコによれば、共和党の上院議員少なくとも2人はトランプの発言に対するコメントを拒否した。共和党の上院議員のなかには、トランプの発言に控えめには懐疑的な立場を示している議員がいるものの、本人に発言の撤回を求めた者はいない。
共和党の大統領候補指名をトランプと争うフロリダ州のロン・デサンティス知事は18日、アイオワ州で、トランプは自身の移民政策を敵対者らが「何か別のもの」に仕立てられるようにする「戦術的な過ち」を犯したと述べ、発言を矮小(わいしょう)化する見方を示した。FOXニュースの番組では「血うんぬんというのはどういう意味なのかわからない」などともはぐらかした。
一方、同じく共和党の候補指名争いに参加し、トランプの盟友から批判者に転じたニュージャージー州のクリス・クリスティー前知事は17日、CNNでトランプの発言は「うんざりする」と非難した。「彼がやっているのは(特定の有権者にアピールする)犬笛だ」と指弾し、共和党がそれを許容していることも問題だと苦言を呈した。
プーチンを引用してバイデン批判も
トランプは16日の演説で、自身の起訴に関して、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領でさえ、バイデンが「政敵に対する政治的に動機づけられた迫害」をしたと述べているとも言及した。さらに、強権的な政治手法で知られるハンガリーのオルバン・ビクトル首相を「非常に尊敬されている」、独裁体制を敷く北朝鮮の金正恩総書記を「とても素晴らしい」などとも持ち上げた。(forbes.com 原文)