プラセボだけで人の心が身体にとってプラスの効果をもたらすことができるのと同様に、心にはマイナスの効果を引き起こす能力もあり「ノセボ効果」と呼ばれている。心身相関に関わるこの興味深いが不吉な現象は、現在、その謎を解き明かそうとする心理学者の間で注目されている。
ノセボ効果とは何か?
プラセボ効果は、十分な研究がなされよく知られている現象であり、心が健康転帰に与える驚くべき力を実証している。当初、臨床試験において不活性物質に対する奇妙な反応として発見されたプラセボ効果は、治癒における心の役割の理解に革命を起こした。しかし、この興味深い心理現象の裏には、対応する暗い部分がある。ノセボ効果(あるいはノシーボ効果)とは、要するにプラセボ効果の反対であり、マイナスの結果が、その可能性を信じることによって実際に起きる現象だ。Pharmacology Research and Perspectivesで発表された研究は、ノセボ効果が起きる仕組みを探っている。
ノセボ効果の仕組みは、心理学および神経生物学の両方に根ざしており、条件づけや否定的な思い込みと、強力な神経伝達物質であるコレシストキニン、内因性オピオイドおよびドーパミンの役割が関係している。さらには、医師の言語的および非言語的コミュニケーションにおける意図しない否定的な暗示がノセボ効果を引き起こすこともある。最も懸念されるのは、ノセボ効果が効果のある薬剤が存在するか否かによらず起こりうることだ。
ノセボ効果は、私たちの期待が自分の健康に強い影響をおよぼすことを明らかにした。つまり、あなたが悪い結果を予想すると、薬や治療による介入の有無に関わらず、あなたの心が実際にそれを引き起こす可能性があることを意味している。その効果はまるで、私たちの心と神経化学に根ざした自己妨害と自己成就的予言が同時に起きているようなものだ。