宇宙

2023.11.04 14:00

天王星のオーロラを赤外線で初観測 生命探査に役立つ可能性

天王星の赤外線オーロラ(赤色)のイラスト。ケックII望遠鏡による2006年の観測データを使用(Credit to NASA, ESA and M. Showalter (SETI Institute) for the background image of Uranus, as was observed by the Hubble Space Telescope (in the visible spectrum) in August 2005)

太陽系第7惑星の天王星を取り巻くオーロラを、赤外線を用いて観測することに、英国の科学者チームが成功した。

巨大氷惑星である天王星のオーロラは1986年に発見されたが、これまでは紫外線でしか確認されておらず、赤外線での確認は今回が初めて。天王星の大気の主成分は水素とヘリウムのため、人間の目に見える可視光スペクトルにはオーロラは現れない。

赤外線オーロラの存在を確認した英レスター大学などの天文学者チームは、科学誌ネイチャー・アストロノミーに10月23日付で論文を発表した。観測データは、ハワイのケックII望遠鏡を用いて得られた。

人を引き付ける魅力

オーロラは、太陽風と惑星周囲の磁力線沿いにある大気粒子との相互作用によって発生する。天王星のオーロラの存在は、自転軸と磁場の軸(磁気軸)がずれている理由を説明する助けになるかもしれない。この奇妙な特徴は天王星だけでなく、海王星や、木星にもある程度見られる。

また、オーロラの明るさは、惑星大気中の粒子の温度によって決まる。これは、太陽系の謎の1つを解明する助けになるかもしれない。

重要な仮説

太陽系の巨大ガス惑星(木星、土星、天王星、海王星)が、推定されるよりも温度が高い理由については、まだ科学的に解明されていない。これは、オーロラが熱を生成し、その熱を惑星の磁気赤道の方向に向かわせることが原因となっている可能性がある。

この仮説は極めて重要だ。なぜなら、生命が存在する可能性のある太陽系外惑星を見つける助けになる可能性があるからだ。その上、現在知られている系外惑星の大半は、天王星に類似している。

サブネプチューン

論文の筆頭執筆者で、レスター大物理天文学部の博士課程学生エマ・トーマスは「これまでに見つかっている系外惑星の大部分は、サブネプチューンに分類され、海王星や天王星に大きさが物理的に類似している」と説明する。「これは、磁場や大気の特徴も似ていることを意味している可能性もある」

トーマスによると、今回の最新論文は、天王星におけるオーロラ研究の新時代の幕を開くもので、巨大氷惑星全般の周囲のオーロラに関する知識の幅を広げるに違いないという。

複数の輪

天王星にはオーロラだけでなく、複数の輪も存在する。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は2月、天王星の輪の撮影に成功した。JWSTに先立ち、1986年には米航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー2号が、2004年にはケック天文台が、それぞれ輪の画像を撮影した。

ボイジャー2号の探査では、人類史上唯一の天王星の近接写真を撮影し、衛星10個を新たに発見した。天王星は、84年かけて太陽を公転しているが、横倒しで自転しているため、最大で1年の半分(地球の42年)は一方の半球の大部分に太陽光が当たらない。「海を持つ天体」である可能性のある衛星が5個あり、これらの衛星には生命が存在するかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔・編集=遠藤宗生

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