NPO「ガン・バイオレンス・アーカイブ(GVA)」がまとめた7月5日時点のデータによると、犯人を除く4人以上が死傷する銃撃事件の件数は、6月21日以降で35件、6月1日以降で86件。今年これまで発生した銃撃事件の4分の1が夏に起きている。2022年夏の6~9月に発生した銃撃事件は278件で、同年全体(324件)の86%を占めていた。
先週末から7月4日の独立記念日にかけた6日間だけでも、ルイジアナ、テキサス、メリーランド、カリフォルニア、ニューヨークなどの州で17件の銃撃事件が発生し、18人が死亡、100人近くが負傷した。この期間で最も死者が多かった事件はフィラデルフィアで発生したもので、3カ所での発砲により5人が死亡、2人が負傷した。
ジョー・バイデン大統領は4日、議会に対し、「地域社会を引き裂く銃撃事件のまん延」に対処し、殺傷力の高い「アサルト武器」と呼ばれる銃や大容量弾倉を禁止するよう訴えた。
米公衆衛生ジャーナル(American Journal of Public Health)に掲載された2016年の論文では、2013~15年の銃撃事件の傾向を調査した結果として、夏の間に事件が増加することが示された。米司法統計局が季節と犯罪の関係を調べた2014年の特別報告書によれば、凶悪犯罪(殺人、レイプ、加重暴行など)は夏に起こりやすいことが分かっている。全米経済研究所が2021年に発表した報告書では、36の矯正施設における暴力犯罪のパターンを追跡調査し、暑い日は受刑者の暴力が18%増加することを突き止めた。
暑い気候は体温のほか、心拍数と血圧も上昇させる。血圧と心拍数の上昇は不快感につながることから、怒りや暴力の増加の原因となると考えられている。ギフォーズ法律センターによれば、夏に外で過ごす自由な時間が増えることも、犯罪率増加の原因だという。学校が休みになる夏には、青少年が暴力行為に及ぶ機会も増える。
気温上昇と犯罪増加の関係は、人種マイノリティが多く住む旧「レッドライニング」地域で特に大きな影響を生む。レッドライニングとは、特定の人種が住宅ローンなどのサービスを受けられないようしていた差別的な慣行だ。
2020年の研究では、各都市の旧レッドライニング地域100カ所を調査した結果、同地域の気温が高かった都市は94%に上ることが判明。2021年に医学誌ランセットに発表された論文では、ロサンゼルスで過去にレッドライニングされていた貧困地区では、気温の高さと犯罪増加に相関関係があることが示された。
高温の一因となっているのが、緑地の不足だ。米農務省の報告によると、都市部では年間約17万5000エーカーの樹木が失われている。米環境保護庁の報告によると、木陰によって地表の温度は11~25度下がることもある。
(forbes.com 原文)