北米

2023.07.06 11:30

米国の殺人件数、ようやく減少傾向に ただし銃撃事件は過去最多の勢い

遠藤宗生

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米国では、先週末から4日の独立記念日を含む6日間で少なくとも17件の銃撃事件が発生し、計18人が死亡したが、調査会社AHデータリティクスのデータによると、今年の殺人件数は今のところ低下傾向にある。新型コロナウイルスの流行に伴う殺人事件の増加が収束した可能性があり、今年は殺人件数がようやく減少に転じる年になるかもしれない。

全米90以上の都市からデータを収集しているAHデータリティクスの犯罪アナリスト、ジェフ・アッシャーによれば、今年の殺人件数は今のところ3791件で、前年同期の4262件から約11%減少している。

アッシャーは先月、米誌アトランティックに対し、残りの半年で傾向が変わる可能性があるとした上で、「殺人件数の年間パーセント変化としては、これまでで最大級になるかもしれない」と述べた。殺人件数が減少傾向にある理由ははっきりしない。

アッシャーによれば、今年殺人件数が減少傾向にある都市には、ニューヨーク(9.5%減)やフィラデルフィア(26.1%減)、ニューオーリンズ(20%減)、ミネアポリス(36.9%減)、シカゴ(7.9%減)などがある。一方で、ワシントンD.C.(13.5%増)、クリーブランド(33.8%増)、ダラス(5.5%増)、カンザスシティ(32.8%増)、ナッシュビル(5.8%増)などでは件数が増加した。

米連邦捜査局(FBI)が2年前に発表したデータによると、米国では2019年から2020年にかけて殺人件数が30%増加した。この記録的な増加は、コロナ流行とジョージ・フロイド殺害事件後の騒乱によるものだとの見方が多い。殺人事件はコロナ前から徐々に増加しており、例えば2018年から2019年にかけては0.3%増加したが、それでも1990年代初頭をはるかに下回っていた。2020年に大きく跳ね上がった後、殺人件数は漸増傾向に戻っており、FBIによれば2021年は前年比で4.3%増だった。

一方、NPO「ガン・バイオレンス・アーカイブ(GVA)」によると、犯人以外の少なくとも4人が銃で死傷する「大量銃撃事件(mass shooting)」の発生件数は今年、同団体がデータ収集を開始した2014年以降で最悪の年となった2021年に匹敵するか、それを超える勢いで増え続けている。6月28日時点での発生件数は332件に上り、2022年の293件、2021年の309件、2020年の240件、2019年の190件、2018年の151件を上回っている。

殺人事件と銃撃事件は数え方が異なる。また、銃撃事件が殺人事件数に占める割合は小さい。複数が撃たれる事件の発生件数は記録的な水準に達している一方で、被害者が必ずしも死亡するとは限らないこともあり、アッシャーのデータにおける殺人事件全体の件数は減少している。

GVAによると、6月30日から7月5日朝にかけ、全米で起きた大量銃撃事件により18人が死亡、少なくとも102人が負傷した。大量銃撃事件は週末と祝日が連続する期間に増加する傾向があり、4日の独立記念日が続いたこの週末も例外ではなかった。昨年の独立記念日の連休には、シカゴ近郊でのパレードで銃撃があり、6人が死亡、31人が負傷した。

米紙USAトゥデイによると、7月4日の独立記念日は、大量銃撃事件の発生件数が一年で最も多いことが、ノースイースタン大学の犯罪学者の分析により明らかになっている。過去10年間の独立記念日に発生した大量銃撃事件は50件以上に上る。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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