立て替えられた保険料は保険会社に返す位置づけで所定の利息がつく。返済の手続きをしなければ立て替え払いは続き、保険料と利息で解約返戻金が枯渇するまで、保障は継続される。
いくつかの選択肢を紹介してきたが、2022年に新たな保険料の捻出方法が誕生した。それが「生命保険の買い取り」だ。
“金融資産”としての価値を活用する
「生命保険の買い取り」は、契約者が保険を第三者に売却するしくみ。解約返戻金よりも高い金額で売却することができる。2022年の4月に新しく「生命保険の買い取り」を手がける会社が誕生し、注目されている。売却以後の保険料負担も保障も無くなることは「解約」と同じだが、契約者側は解約返戻金を上回るまとまった一時金を手にすることができる。
第三者である買い取り会社が保険料を払い続け、死亡・高度障害時に保険金を受け取るしくみだ。
なお、買い取りの対象になるのはあくまで死亡保障部分のため、入院や手術などの医療保障が付いている場合、医療保障の受給権は、「生命保険の買取」後も引き続き契約者のもとに残る。
利用したい場合は、買い取り業者に申し込む。買い取り金額が提示され、その金額に納得がいった場合は、保険金受取人や同居家族等の関係者の承諾を得ると、手続きが進められる。
欧米では主流に
だが、「生命保険の買取」という言葉を初めて耳にした人のなかには、まるで死神ビジネスで胡散臭いものだと思う人もいるかもしれない。日本ではポピュラーではないものの、欧米では20世紀から広まり、合理的な制度として浸透している。米国で1980年代末に登場。生活費や医療費に困窮したエイズ患者の暮らしの安定の一助にする位置づけで始まっている。
2013年には、米国のテキサス州で、生活保護と「生命保険の買取」を融合させた州法が州議会で可決・成立している。
生活保護申請者は、生活保護を受給する前に加入済みの生命保険契約について州が運営する信託会社に譲渡する。その譲渡代金をプールして、一部を生活保護申請者に毎月支給するというのがおおまかなしくみだ。譲渡代金が枯渇した段階で、州の生活保護の受給が開始される流れになっている。
生活保護を検討するほど困窮しても、まずは「生命保険の買取」を利用することで自分の財産での生活ができる点が、申請者の心理的なハードルを下げる効果があるという。加えて、州としては予算を減らすことができるため、制度の評価は高く、他の州にも拡大している状況だ。