私たちは従来の企業の在り方では変革できないことを肌で感じている。デザイン思考、サービスデザインのようなキーワードがあふれる今、世界屈指のクリエイティブエージェンシーDroga5を率いるデビッド・ドロガは、今こそ「クリエイティブ」への考え方が重要だと説く。
デビッド・ドロガは国際的な広告賞カンヌライオンズの受賞最多記録をもつクリエイターである。世界屈指のクリエイティブエージェンシー「Droga5」の創業者であり、アクセンチュアソングCEOの彼が、企業の未来を語る際に例にあげたのが、2021年にふくおかフィナンシャルグループが開業したスマホ完結型の「みんなの銀行」だった。
「福岡銀行では10年以上前と比較して、実店舗への来店者数が40%も減少していました。コロナ禍よりも早くから減少傾向に入っていて、顧客の期待値の変化は明らかでした。この変化に対応するために、20〜30代の若者に着目し、顧客に対して何ができるのか。クリエイティビティを軸に未来の銀行の在り方から企業課題の解決を図りました」
スマホだけで完結する利便性だけでなく、お金の使いすぎを未然に防ぐサービスなど生活に根ざした機能をスマホアプリに備えさせた。これがデジタル銀行の世界的な新しい潮流につながったという。クリエイティビティというと専門的なものと誤解されがちだが、ドロガは「心のこもった、思いやりのある方法で人々の心をつかむこと」と言う。
「企業が顧客の全人生を見渡し、人生中心(ライフ・セントリシティ)のアプローチをとることで、企業は顧客と新たなつながりを形成し、未来にも価値を提供し続けることができるのです」。
長年、日本企業を見てきた彼は、日本は可能性にあふれているという。
「伝統を重んじることが足かせになってスピードを遅くしていますが、野心的でもあります。今後、成功を収める時代になるはずです」
デビッド・ドロガ◎アクセンチュアソングCEO。世界的なクリエイティブエージェンシーDroga5の創業者でもある。数々の広告クリエイティブ賞を獲得している。