宇宙

2023.03.23

珍しい地球近傍彗星が接近通過、火球の目撃情報相次ぐ

彗星「P/2016 BA14」のレーダー画像(NASA/JPL-Caltech/GSSR)

彗星「P/2016 BA14(PANSTARRS)」は、一般的な彗星とは異なる。2016年に発見された当初は死んで乾いた小惑星だとみられていたが、その後の観測の結果、氷などでできた彗星であることが分かった。

ほとんどの彗星は、太陽系の外側にある「オールトの雲」と呼ばれる領域に由来する。深宇宙で太陽を中心とした長い楕円軌道を持ち、1度の周回に何万年もかかるものもある。

P/2016 BA14は、珍しい地球近傍彗星の一つだ。3万個以上ある地球近傍天体のほとんどが小惑星で、彗星は120個しかない。

つまりP/2016 BA14は、(特に活動的ではないとはいえ)彗星を間近に見られる貴重な機会を提供してくれる天体だ。実際、2016年に発見された直後の接近通過は、彗星が地球に最も近づいた事例の一つとなった。

今週起きたP/2016 BA14の接近通過は、天文学者たちの心を浮き立たせただけでなく、人々がそのかけらが大気に突入するところを見る機会をつくった可能性がある。一部の予測モデルでは、直径数kmのP/2016 BA14の核から分裂した小惑星の雲を地球が通過する可能性が示されていた。

国際流星機構(IMO)は、3月20日夜と21日朝に流星爆発を見られる可能性があると発表。流星群がより見えやすいとされている南半球では特に可能性が高いし、「新月で月明かりがなく、彗星による流星活動の観測が邪魔されないため、これは絶好のタイミングだ」と説明していた。

IMOはこれまでに20日と21日の火球目撃報告を数十件受け取っており、一部は南半球からだった。

火球がP/2016 BA14から来たものなのか、あるいは、よりありふれた宇宙塵(じん)に由来するのかを見分けることは難しいが、流星爆発の可能性が予想された期間内に明るい火球が目撃され、衝撃波音が聞かれている。

今回の接近通過を見逃したとしても心配はいらない。P/2016 BA14は数年後、再び地球に接近する見込みだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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