そんな彼女の夢が、一歩実現に近づいた。ハリウアが設立した「Loyal」は3月10日、米食品医薬品局(FDA)から犬向けの長寿薬の臨床試験実施を承認されたと発表した。試験で良好な結果が得られた場合、早ければ2025年に発売される可能性がある。
「私たちは、犬用の老化防止薬承認の前例を作ろうとしている」と現在28歳のハリウアは言う。Loyalのカレン・グリーンウッド規制・戦略担当上級副社長は、年内の臨床試験開始を目指していると述べている。試験は比較的シンプルな方法で行われ、デモグラフィックが類似した老犬を対照群と治療群に分け、寿命とQOL(生活の質)を、獣医師と飼い主の観察に基づいて評価する。
FDAは動物用医薬品の認可も行っているが、通常認可の対象とするのは病気の治療薬だ。これに対し、Loyalが開発中の2つの薬は、犬の長寿を目的としているため、FDAへの申請は難航したという。それでもグリーンウッドによると、「社内の統計学者らは、FDA側の統計学者とのマニアックなやり取りを楽しんだ」という。「素晴らしい科学者が揃っているFDAに新しい事実を伝えることをいつも楽しんでいる」
ハリウアは、犬よりも飼い主の方がかなり長生きするという、愛犬家にとっての大きな悲しみに対処することを目指し、2019年にLoyalを設立した。犬が長生きしない原因の1つは犬を家畜化する過程で行われた近親交配にあるが、犬の寿命を伸ばすことは可能だと彼女は主張する。
たとえば米ペットケア会社ピュリナの研究では、ラブラドール・レトリバーにぜい肉を落とすためのカロリー制限食を与えたところ、寿命が延びただけでなく、生活の質も向上したという。
代謝経路を活性化させる
Loyalが開発している薬は、カロリー制限食が活性化するのと同じ代謝経路を活性化させ、理論的には犬の健康寿命を何年も延ばすことが可能だとハリウアは説明する。臨床試験では、これを実証することになる。Loyalは、創業以来Browder Capitalやコースラ・ベンチャーズなどのベンチャーキャピタル(VC)から5800万ドル(約78億円)を調達している。これらのVCは、一般的にLoyalのようなバイオテクノロジー企業よりも、ソフトウエア企業に出資することが多いが、このようなリスクを取るVCがいることこそがシリコンバレーの良さだとハリウアは考えている。
「厳密で規制の厳しいサイエンスを、シリコンバレーのVCから得た資金で行うことは非常に興味深いことだと思っている。しかも、私たちはバイオテクノロジーのメッカであるボストンの企業ではない。大きな技術的問題の解決に賭けるということはシリコンバレーのVCらしい行為だが、ここ数年はそれが少なくなっている」とハリウアは語った。
(forbes.com 原文)